日本の株価は7月に4万2224円の史上最高値を付けた後、8月に入るとブラックマンデーを超える4451円の大暴落と大幅上昇の乱高下が起こりました。新NISAなどで初めて株への投資を行なっていて大きな損失を被った人も少なくないようですが、この間の株価の急上昇によって個人保有の金融資産は1年で146兆円も増大し2199兆円に達しました。このことは人びとが豊かになったことを意味せず、持つ者と持たざる者の間の格差がますます拡大していることを意味します。ジニ係数で見る所得格差は横ばいですが、金融資産格差は急速に拡大していると推測されます。また、相対的貧困率は15.4%(21年)とG7の中では2番目に高く、とくに高齢の単身女性とひとり親世帯のそれは際立って高くなっています(44.1%と44.5%)。夏休みで学校の給食がないために1日2食で我慢している貧困家庭の子どものことが報じられています。格差社会と貧困の問題がいっそう深刻になっていることは否定できません。
次回は、格差社会の問題を論じ続けてきた橘木俊詔さんの『資本主義の宿命/経済学は格差とどう向き合って来たか』(2024年、講談社現代新書)をテキストにして、格差と貧困の現状、格差社会に対する経済学の向き合い方と福祉国家の歩み、ピケティの作業の評価、経済成長(効率性)と公平性のトレードオフ関係といった問題を取り上げます。今後の日本における社会保障と税のあり方を構想するために必要な基礎的な作業と討論の場としたいと思います。みなさまの積極的なご参加をお願いします。
(白川真澄)
第19回「経済・財政・金融を読む会」
- 日時:10月27日(日) 13:30~16:30
- テキスト:橘木俊詔『資本主義の宿命/経済学は格差とどう向き合って来たか』
(2024年、講談社現代新書) - 報告:大河 慧
- 形式:オンラインでの報告と討論/事前にお申し込みください
- 参加費:無料
オンライン形式で行いますので、参加をご希望の方は下記のボタンよりお申し込みをお願いします。