オルタナティブ提言の会

 ピープルズ・プラン研究所は、2009年4月、さまざまな分野の社会運動に取り組んでいる人びと、地方議員、国会議員、研究者、ジャーナリストらとともに「オルタナティブな社会」めぐる討論を始めました。
 1年後に報告書となる提言文書をまとめることをめざして、いくつかのテーマを立てて、月1回のペースで研究会を開き、討論を積み上げていきます。
 詳しい主旨は以下の「呼びかけ」に書かれています。また、各回の議論の内容は議事録の形で公開していきますので、ぜひ、ご意見をお寄せください。

オルタ討論への呼びかけ文
私たちの活動に関心をもってくださるみなさんへ
――オルタナティブを提言するための討論を一緒に始めませんか
 

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 いま、世界が大転換期に入っていることを私たちは日々実感しています。泥沼化したイラク戦争の失敗のなかでブッシュ政権は退陣し、オバマ新政権は単独行動主義から多国間協調主義への転換を余儀なくされました。米国発の金融危機はあっという間に全世界に伝播し、世界は1929年世界大恐慌以来の大不況に突入しています。政治・軍事面でも金融面でも「アメリカ帝国」が歴史的な没落の過程に入ったことは、誰の目にも明らかです。世界を席巻してきた市場万能の新自由主義イデオロギーにもとづく制度・政策は、ものの見事に破綻しました。

 既存の支配秩序が音を立てて崩れているなかで、多くの人びとが金融の暴走を生むグローバル資本主義に疑問を抱き、その根本的な変革の必要性を感じています。環境面からも現在の経済・社会システムの方向転換の必要が、一刻の猶予もなく迫られています。しかし、各国の政府もメガバンクと巨大企業の経営者も金融安定化と財政出動の場当たり的な政策を持ち出すだけで、これからの世界と社会と経済がいかにあるべきかという長期的なビジョンをまったく描くことができません。とくに、日本の為政者たちが相も変わらず日米協調の堅持という惰性的な発想にすがりつき、無為無策に終始している姿は際立っています。

 金融危機と大不況の犠牲を最も強く押しつけられているのは、「派遣切り」に象徴されるように非正規雇用の労働者、失業者、女性、若者、外国人など貧困層の人びとです。そのなかから抵抗のたたかいや助け合いの運動が立ち上がってきているものの、多くの人びとは、これからの社会や経済の行く末、自分たちの雇用や生活がどうなるのか先の見えない不安のなかに置かれています。さらに、その不安が、移住労働者やフェミニストに対するバッシングに見られる、いわゆる疎外された者どうしの叩き合いに帰結してしまうことも稀ではありません。そして、今はかろうじて切り捨てられずに生活している人びとも、そこから脱落しないための超過労働、過当競争を強いられています。


 こうした状況は、これからの世界や社会や経済や政治についてのオルタナティブを大胆に討論し、構想し、提示する必要性を社会運動の側に喚起しています。世界的な反グローバリゼーション運動のなかから「もうひとつの世界は可能だ」という提起がされてきましたが、日本でも、抵抗・反撃のたたかいや連帯・助け合いの運動をしっかり発展させること、そしてもう一歩その先に進むことが問われていると思います。それは、現在の社会・経済・政治のシステム全体を根本的に変えることをめざして、それに代わるオルタナティブ(もうひとつの世界と社会)を構想し共有していくことです。そうした作業が必要だという声や気運も高まっているように感じられます。

 そこで、社会運動の現場に根ざしながらオルタナティブな構想を練る討論を始めよう、と私たちは考えました。また、討論を進めるに際しては、次のようなことが必要であろうとも考えています。

(1)何をめざすのか(いかなる世界と社会をめざすのか)、誰がそれを実現するのか(どのような主体がその世界と社会を実現するのか)、いかにしてそれを実現するのか(どのような道筋と手段によってその世界と社会を実現するのか)、という3つの事がらが密接不可分な関係で明らかにされる必要がある。

(2)現存のシステムや現状に対する具体的で理論的な批判からオルタナティブを導きだすだけではなく、現実のさまざまな社会運動のなかで生まれ育ってきた思想や言葉や構想をすり合わせ普遍化する作業を通じてオルタナティブを導きだすことが重要である。

(3)オルタナティブのさまざまな異なったレベルの自律性と相互関連を意識しながら討論する必要がある。たとえば世界的・国際的なレベルのオルタナティブ、一国的なレベルのオルタナティブ、地域や生活のレベルでのオルタナティブ、人権やアイデンティティ(自分の存在が認められること)といったレベルでのオルタナティブ、あるいは原理・原則的なレベル(現在のシステム総体を原理的に批判し変革するレベル)のオルタナティブと制度・政策的なレベル(運動の高まりや政治的力関係の変化によっては実現可能な望ましい制度・政策を提唱するレベル)のオルタナティブとの間を往復しながら討論する。

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 このようなオルタナティブの討論を集約するには、いろいろな形が考えられます(たとえば大きな規模の社会フォーラムのようなものを開くといったこと)。しかし、自分たちの力量に応じて、もう少し手前の集約点を設定することがよいと思います。
そこで、とりあえず(世界的な連関のなかでの)日本の社会と経済のオルタナティブについて提言する文書の作成を目標にした討論を一緒に行なうことを提案させていただきます。このオルタナティブは、さしあたり一国レベルではあるが、グローバルな変革と主体の形成の展望という文脈のなかで提示されるものでなければならないと思います。

 この提言文書は、経済危機の深刻化にともなう雇用や生活の破壊がいっそう進行する一方で、総選挙による政権交代の可能性を含む政治の流動化が起こる状況を睨んで、日本の社会・経済・政治が直面しているいくつかの課題に即してのオルタナティブを提言するものです。政党の「マニフェスト」とはまったく異なる文脈や視点から構想されると同時に、できるかぎり具体性をもった内容を提示することをめざしたいと思います。

 そして、何よりもさまざまな課題や分野の社会運動に取り組んでいる人びと、さらに地方議員、国会議員、研究者、ジャーナリストに向けて問題を提起し、より広い社会的な討論を喚起するきっかけとなることをめざしたいと思います。
具体的には、1年後に報告書となる提言文書をまとめることをめざして、いくつかのテーマを立てて、月1回のペースで研究会を開き、討論を積み上げていくことがよいと考えています。

 私たちは、「言いだしっぺ」として以上のような提案をさせていただきますが、みなさんと意見交換し、共同作業のプランを煮詰めた上で、できるだけ早い時期に作業を立ち上げたいと考えています。お忙しい活動に追われておられることを承知の上で、特別に時間を割いていただけることを心から希望するものです。なお、参考資料として、私たちが議論してきた「オルタナティブ討論のテーマ」を付けさせていただきます。
この提案の趣旨をご理解のうえ、ぜひ一緒に作業に参加してくださるようお願いいたします。

 立ち上げのための最初の会合を、勝手ながら次のように設定させていただきますので、時間の都合をつけてご出席ください。
日時 2009年6月6日(土) 14時?18時
場所 ピープルズ・プラン研究所会議室
議題 オルタナティブを提言するための討論をどう進めるか

ピープルズ・プラン研究所運営委員会
2009年4月