いま、なぜ、ベーシック・インカムか
2018年7月20日 白川真澄
? ベーシック・インカムへの期待の高まり
1 いま、再び、ベーシック・インカム(BI)に対する関心や期待が高まっている。
(1)日本において、BIへの関心や期待が生まれたのは、深刻化する貧困問題に対する解決策としてであった。2000年代に入って格差社会が到来し、貧困が急激に増大してきた。すでに企業社会中心の生活保障システムは崩れていたが、貧困の急増に対して生活保護制度(最後のセーフティネット)も有効に対応できなくなっていた。貧困を克服し生存権を守る最低所得保障システムとして、ベーシック・インカムへの期待が高まった。
*相対的貧困率は、1990年代の14.6%(1997年)から2000年代の16.0%(2009年)へ と上昇し、生活保護受給者も1990年代の88.2万人(1995年)から2000年代の176.3万人(2009年)へと倍増した。
*日本では、企業が終身雇用・年功賃金・企業内福祉によって労働者に生活の安定を提供する(失業は例外的)という生活保障のシステムが続いてきた。1991年のバブル経済崩壊後、企業は、グローバル化のなかのコスト切り下げ競争のため非正規雇用を急増させ、企業中心の生活保障システムは崩れてきた。
*しかし、政府による公的な社会保障や生活保障のシステムは、年金と医療の制度を別とすれば本格的に構築されていなかった。失業率が高まり不安定な非正規雇用が広がるなかで、2008年のリーマン・ショックが追い打ちをかけて、失業者が急増した(2009年の失業者は336万人、失業率は5.1%)。
*現在、生産年齢人口の減少に伴う労働力不足が急激に進行するなかで、失業率は2.5%にまで改善され、失業問題は解消された、といってよい。しかし、年収200万円以下の労働者は1000万人を超え(1132万人、労働者全体の23.3%、2016年)、働いても生活できるだけの賃金を得られない労働者(ワーキング・プア)は減っていない。
*相対的貧困率はやや低下したとはいえ、それでも15.6%(2015年)である。子どもの貧困率は13.9%、1人親世帯の貧困率は50.8%と、先進国のなかで高い水準である。生活保護受給者も、微減したといえ212.5万人(17年9月)である。また、まったく貯蓄がない世帯が31.2%(17年、2人以上、単身世帯では46.4%)もいる。貧困問題はまったく解決されていない。
(2)再び、BIへの期待や関心が高まっている理由は、AI(人工知能)の急速な発達と普及である。すなわち、AIが人間の労働を代替することによって、労働者が仕事を失って大量に失業するリスクが将来的に予想される。そうなると、高度なスキルを有する少数の労働者を別とすれば、多くの人にとっては労働して所得を稼ぐ機会が奪われてしまう。そこで最低所得保障のシステムとしてBIの導入が、必要不可欠になる。
2 世界各地で、BI導入の動きが始まっている。
(1)スイス/2016年6月5日の国民投票に、BIの導入提案をかけた。大人が月額2500スイスフラン(約27万5千円)、子ども625スイスフランというBIの導入提案は、賛成が23%で否決された。提唱した市民運動は、予想を上回る賛成票の多さに喜んだ。
(2)フィンランド/2017年1月から2年間、25?58歳の失業者2千人を対象にして、失業保険の支給の代わりに、無条件で月560ユーロ(約7万5千円)の現金を給付する実証実験を始めた。フィンランドでは失業率が8%台に高止まりしているため、BIが失業者の働く意欲を高め、失業の減少につながるかを調べるのが狙いである。現在の失業保険では一定額以上の所得があれば給付が減らされたり、臨時所得の有無や求職活動状況を提起的に社会保険事務所に報告する拘束がある。BIを給付されている多くの失業者は、「自由を与えられた」と感じている。しかし、費用負担の大きさが問題になり、当初1万人で計画された実験が2千人に縮小された(朝日新聞18年1月25日)。
(3)イギリスのスコットランドにあるファイフ(人口37万人)では、2020年にもBIの実験を始める。ここでは、失業者に限らないで特定の地区(炭鉱が閉鎖され失業が深刻で、子ども貧困率も高い)の全住民を対象にする。給付額の詳細を決めるのは先だが、2千人規模で2年間、25?64歳に最大年7800ポンド(約120万円)、15歳以下の子どもにも最大年4630ポンド(約72万円)を給付する案などを検討している(前掲)。
(4)オランダのユトレヒト市(人口31万人)など4都市が、BIの導入実験を2016年1月から開始した。対象者は既存の社会保障給付の受給者300人であり、1人当たり900ユーロ(約12万円)から夫婦世帯当たり1300ユーロ(約17万円)の範囲内でBIを給付する。社会保障給付の受給者が、低賃金パートの仕事ではなく長期的に持続できる仕事に就く余裕を持てる可能性を調査する。
? AIが労働者から仕事を奪う可能性
1 最近のAIは高い能力を獲得している
最新のAIは、人間が作ったプログラムに従って作業(情報の整理など)を行うというレベルを超えて、プログラムが自ら学習し自らを高める能力を獲得している。すなわち、ディープラーニングを取り入れたことによって、コンピュータが大量の情報(ビッグデータ)を吸収して自律的な学習を通じて独自の思考力・判断力や知識を獲得できるようになっている(滝川一郎「AIが変える世界」、『テオリア』18年4月10号を参照)。
2 AIの導入と普及によって、人間の労働が急激にコンピュータに代替される可能性が現実のものになりつつある。
(1)オックスフォード大学のM・オズボーンらと野村総研の共同研究は、日本の601の職業についてAIに代替される確率を計算し、約49%の仕事が10?20年後にAIに置き換えられるという試算を発表した(2015年、『中央公論』16年4月号)。また、米国の702の職業のうち約半分が失われる可能性がある、英国の仕事のうち35%が、今後20年間でロボットに置き換えられる可能性がある、という試算もある。
(2)AIによって代替される仕事には、会計事務、器具組立て、ビル清掃、配達など単純な作業だけではなく、知識や経験を必要とする高度で複雑な仕事も多い。たとえば医師・会計士・弁護士あるいはバスやトラックの運転士といった職業である。
*運転・輸送の分野では、タクシーやトラックの運転の仕事が自動運転の技術によって代替される。自動車メーカーは、競って自動運転の技術の実用化に取り組んでいる。ここでは、AIが自分の行為によって周囲にどんな影響が出るか認識できるようになると、ロボットのプランニング(行動計画)の精度が上がる。これを応用した自動運転は実は安全性が高く、わき見運転や安全不確認などによる事故防止に役立つ。また、自動運転やドローンは、過疎地に住む高齢者など「交通弱者」に便利なサービスを提供することができる。
*顧客に応答する仕事の分野では、AIは、蓄積されてきた大量のデータのなかから最適解をすばやく取り出す機能に優れている。日本の大手銀行は、IBMのAI「ワトソン」を使ってコールセンターの業務の効率化を図っている。スイスの大手銀行は、AIを導入して顧客の資産状況に応じたポートフォリオを提供している。またソフトバンクが開発した人型ロボット「ペッパー」は、相手の感情を認識して定型のコミュニケーションをしたり、店舗内で接客する。
*広告やマーケッティングの分野では、顧客の属性や購買履歴、ニーズの変化など大量のデータをリアルタイムに収集し、最適な商品を開発し宣伝することができる。ディープラーニングによって画像認識の精度が高まると、従来のマス向けの画一的な広告から個人の趣味嗜好に応じたターゲッティング広告に変わっていく。
*医師や弁護士といった専門的な知識と豊富な経験を要する仕事の分野でも、AIによる仕事の代替が進む。医療の分野では、画像診断技術が向上すると、内科医の画像診断での見落としの危険が減り、医師の負担感も軽くなる。また、弁護士の仕事は、顧客の情報を整理したり、関連する法令をチェックしたり過去の判例を調べるという煩雑な業務をともなう。こうした大量のデータを使う作業は、AIが得意とするものである。
(3)オズボーンらの予測に対して、AIによる労働の代替はそれほど急激に進まないという研究も出された。
*ドイツのアーンツらは、職(job)ごとではなく作業(task)単位での機械化可能性を検討すべきだと指摘。その結果、自動化可能性が70%を超える職は米国でも全体で9%にすぎず、最も割合の高いドイツ、オーストリアで12%である。大部分の職は自動化可能性が50%、つまり職を構成する作業の半分程度が自動化され、残りの半分程度は人間がこなすタイプの職である、と報告した(岩本晃一ほか「AIの雇用への影響を考える」、日経新聞17年11月7日「やさしい経済教室」)。
3 もちろん、すべての仕事がAIに置き換えられるわけではない。
(1)AIが不得意な仕事、つまり人間にしか備わっていない能力を必要とする仕事は、人間に残される。
*創造性が高い分野(ゲームクリエーター、インテリアデザイナー、図書編集者らの仕事など)、対人コミュニケーション力(オズボーンが「社会的知性」と呼ぶ)が求められる分野(教員、カウンセラー、コンサルタント、医師、看護師、介護士、保育士など)、「非定型的」な仕事の分野(データの蓄積がない分野、直観力や想像力が重要な役割を果たす革新的なビジネスの起業など)。
(2)AIが普及していく過程で、新しく生まれると予想される仕事もある。
*ロボットアドバイザー(ロボットの普及にともなうトラブルや課題を家庭や企業からヒアリングし改善する、ロボットへの正しい向き合い方をアドバイスする)、マインドインストラクター(急激な技術進歩によって揺らぐ人びとの価値観や幸福度について解決策を提示する)など。
(3)したがって、楽観的な見方としては、これからは人間とAI・ロボットが一緒に働く場
面が広がっていくという協働・共存の将来像が予測されている。
*すでにモノづくりの工場では、人間とロボットが協働して作業をしている。これから介護の現場にロボットが入ってくれば、入浴介助やベッドに移す作業はロボットに行わせることができるが、入所者に声をかけたり談笑する仕事は人間が担うしかない。
*医療や法務の分野でも、画像診断はAIによって精度が飛躍的に向上するが、患者の個々の事情や人生観や不安に応じて治療法を決めるのは、医師と患者の話し合いである。そこでは、人間の優位点であるコミュニケーション力が力を発揮する。
4 その一方で、AIの発達によって大半の人間労働が不要になり、大量の失業者が生まれ、全人口の1割程度しか働かない(働けない)社会が到来するだろうという超悲観的な予測もある。
(1)井上智洋は、AIには「特化型AI」と「汎用AI」があり、2030年頃には「汎用AI」が出現し、45年頃には社会全体に普及しているだろうと予測する。井上によれば、特化型AIは、例えばSiriや自動運転のように1つの作業(業務)しか行えず特定の職業を代替するにすぎない。これに対して、汎用AIは、人間のようにあらゆる作業をこなせるAIである。これはまだ研究開発途上にあるが、登場すれば人間の多くの職業を代替できる。
(2)汎用AIにかかるコストが人間の賃金を下回れば、それが人間に代わって使われる。汎用AIなどの機械だけが働くようになり、人間の労働は要らなくなる(「純粋機械化経済」)。ただし、新商品の企画・開発や生産活動全体のマネジメントなど、人間は間接的に生産活動に関わり続ける。こうした経済では、労働力という制約要因がなくなるから、経済成長率は飛躍的に高まることになる、と(『人工知能と経済の未来』)。
(3)しかし、AIやロボットだけが生産活動を担う経済(純粋機械化経済)では、大量の失業者が生まれ、全人口の1割程度しか真っ当な労働(内実のある仕事をして所得を稼げる労働)をしなくなる。日本では、30年後の2045年には約1000万人(全人口の1割、現在の就業者数の15%)しか働いていないと予測される。
(4)AIにかかるコストよりもはるかに安い賃金で働く場合には、人間は、アルバイトなどという身分で雇用はされる。だが、それでは生活できるだけの所得は得られない。
(5)汎用AIの利用による経済成長率の加速度的上昇は、供給面からだけ言えることで、需要面からは経済が縮小する可能性がある。なぜなら、多くの労働者が失業して所得を得られなくなり、消費需要が減少するからだ、と。
(6)井上の議論は、極度に単純化されていて人間労働が生産の主体でなくなるようなディストピアを描いたものである。しかし、AIの急速な発達と普及が、人間の労働と雇用に及ぼす破壊的な作用を端的に提示している、と言える。
4 AIの導入は、生産性を向上させ労働力不足をカバーする効果を発揮する可能性をもつ反面、人間が行っていた多くの仕事がAIに代替されることによって大量の失業者が生まれるリスクを抱えている
(1)政府も、AI活用の「第4次産業革命」(「大量の情報を基に人工知能が自ら考えて最適の行動を取る」)が雇用と所得に深刻な影響を及ぼす可能性を指摘している。「第4次産業革命が進行する中で、産業構造や就業構造は変革していかざるを得ない。……。技術や産業の変革に合わせて、人材育成や労働市場、働き方を積極的に変革していかなければ、雇用機会は失われ、雇用所得は減少し、中間層が崩壊して二極化が極端に進んでしまう」。「第4次産業革命は、人口減少問題に打ち勝つチャンスである一方で、中間層が崩壊するピンチにもなり得る」( 「日本再興戦略2016」 )。
(2)経産省の試算によれば、AIによる労働の置き換えが進行すると、現在(2015年)から2030年までの間に735万(実質GDP成長率が0.8%の場合)?161万人(2.0%の場合)の雇用が失われる。
*雇用の喪失が161万人にとどまるのは、第4次産業革命の進行に対応して新しいサービスの創出や職業訓練による労働力移動(転職)に成功する場合である。この場合、高付加価値のサービスを提供する仕事(高級レストランの接客、きめ細やかな介護、カスタマイズされた高額な保険商品の営業など)やIT業務や研究開発の分野で434万人の雇用が創出される。
*それでも、製造部門(ラインの作業員など)の297万人、バックオフィス部門(経理・人事、データ入力の事務員など)の143万人、営業販売部門(スーパーのレジ係など)の68万人、サービス部門(飲食店員、コールセンターなど)の51万人、その他(建設作業員など)37万人、合わせて約600万人の雇用が失われるから、雇用は減少するのである。政府の試算は、実質2%という高い経済成長率(現在の潜在成長率は1%)を期待していて、雇用機会の喪失を過小評価していると思われる。
5 AIの発達と普及は、雇用の機会が縮小させ失業を増やすだけでなく、まちがいなく雇用の二極化を進行させ所得格差の拡大を引き起こす。
(1)AIの開発や操作の仕事をはじめ創造力やコミュニケーション力を発揮してAIが代替できない高度の知的作業を担う人びとの雇用機会は、限られている。例えば、労働政策研究・研修機構の試算(2015年)によれば、IT関連の情報通信産業は、就業者が2014年から2030年にかけて36万人増えて242万人になると推計されているが、就業者数はそれほど多くない(医療・福祉は215万人増えて962万になる)。
(2)AIの開発・操作に従事する人びとは、高い報酬を得られる。その反面、多くの労働者は、対人サービスの分野などでAI導入のコストよりも安い賃金で働くのであれば雇用してもらえる。そうなると、働いても生活できるだけの賃金を得ることが難しくなる。
(3)こうして、AI導入にともなって雇用の二極化が進行し、所得格差がいっそう拡大することになる。これはすでに、IT産業が経済を牽引してきた米国で出現している事態である。IT産業で働く技術者や研究者は高額の報酬を得ているが、製造業で相対的に高い賃金を得て働いていた労働者の多くは、製造業の衰退に伴なってサービス部門(GSやコンビニ)に移って低い賃金で働くことを強いられてきた。こうして米国社会の中間層の没落と二極化が進行し、それがトランプ大統領を誕生させたことは、よく知られている。
6 人間の労働を代替するAI導入が雇用機会を縮小して失業を増大させ、雇用の二極化と所得格差の拡大を招く可能性は、否定できない。多くの人びとにとって、働くことによって生活できるだけの収入を得ることができなくなる社会が到来することになる。そこで、生活できる最低限の所得を保障する制度としてBIの導入が提唱されつつある。面白いことに、研究者(井上智洋など)だけでなく、米国のフェイスブックやテスラのCEOもベーシック・インカムの必要性を唱えている。
? BIとは何か
1 BIは、 すべての個人に対して最低限の生活ができるだけの所得 (「基本所得」) を無条件に保障する仕組みである。
(1)BIは、無条件で給付される、ということが最大の特徴である。すなわち、働いているか否か、働く意思があるかないか、収入や資産が高いか低いかにかかわりなく、全員に現金が給付される。
(2)生活保護給付をはじめほとんどの社会手当は、所得による制限が課せられていて、給付対象が限定されている。BIは、所得制限を取り払い、働く意思があるかないか(失業手当ての条件)、収入や資産があるかないか(生活保護)といった条件をなくす。すべての人を対象にする現金給付という意味では、普遍主義(ユニバーサリズム)の典型である。
(3)従来の社会保障給付のように家族単位ではなく、個人単位で一律に現金が給付される。
2 BIは、所得を得ることを労働から切り離して社会的に保障する。
(1)近代社会では、働いて所得を得て生活すること、つまり「働かざる者、食うべからず」)が当然の大原則とされてきた。しかし、BIは、所得を稼ぐことと働くことを切り離す。
(2)このことは、労働を否定することではまったくない。逆である。所得と労働を切り離すことによって、お金を稼ぐ労働だけが価値ある労働として評価されるのではなく、無償の労働や活動(家事労働、ボランティア活動、相互扶助など)も同等の価値をもつものと評価される。労働がお金を稼ぐというだけの目的(束縛)から解放されるから、自己実現する、他者と交わり認知されるといった労働の本来の意味を取り戻すことができる。
*BIが全員に給付されれば、夫が妻(専業主婦や主婦パート)に対して「誰が食わせてやっているんだ!」といった暴言を吐くことはできなくなる。
(3)生活するための最低所得が保障されるから、働いてお金を沢山稼ぐか、それともボランティア活動やお金にならない好きな活動(詩を書くなど)をするかを、自由に選択できる。BIは、自由で多様なライフスタイルの選択を可能にするのである。
*R・ブレグマンは、多くの実験結果を踏まえて、BIは失業者に「選択の権利を与える」ことを強調している(『隷属なき道』)。
(4)BIは、政府が税によって最低限の生活ができる所得を一律に給付する。従来の複雑化した所得保障の仕組み、すなわち基礎年金、子ども手当、失業手当、一連の所得控除(課税前の収入から控除される基礎控除、給与者所得控除、配偶者控除、扶養控除など)、生活保護といった制度をなくして、一律の最低所得保障に一元化する。これによって個人の所得や資産の調査による資格審査がなくなり、行政的な事務コストも節減できる。
3 BIは最低所得保障の制度であるが、 対象を一定所得以下の貧困・低所得層に絞る(ターゲッティズム)のではなく、すべての人を対象にする普遍主義(ユニバーサリズム)の立場に立つ。
(1)BIは、人間らしい生活を保障するために一定額の現金を支給する最低所得保障の制度である。生活保護や児童扶養手当(1人親家庭の子どもへの手当て)や就学援助や失業手当など多くの最低所得保障の制度は、その対象を特定の人びと、つまり一定の所得以下の貧困・低所得層に限定している(所得制限付きの給付)。これに対して、BIは、対象を限定しない普遍主義的な最低所得保障の制度である。これに近いのは、子どもであれば親の所得のいかんに関わりなく一律に現金を給付した民主党政権時代の子ども手当である。
(2)生活保護に代表されるターゲッティズムは、支援を切実に求めている人びとに応える即効性があり、給付の範囲を限定するから財政負担も小さくて済む(生活保護事業費は2008年の2.7兆円 → 17年の3.8兆円)。
(3)しかし、ターゲッティズムには、大きな欠陥がある(井手英策『財政赤字の淵源』など)。
*支援を受ける人に対する「偏見」が起こりやすい。「怠け者」だったから貧困に陥ったのだといった「烙印」(スティグマ)が貼られる。これを避けるために、「最低生活費」を下回る収入しかなく受給資格がありながら、生活保護を申請しない人も少なくない。
*「選別」にかかる多額の行政コストが発生する。所得や資産の把握に手間や時間がかかる。とくに生活保護の場合は、所得と資産に関する厳格な審査(「資力調査」、ミーンズテスト)が行われる。それは、当事者にとっても煩わしく屈辱感を伴う。
*所得制限があることによって労働へのインセンティブが低下することもある。所得制限を超えないように就労時間を減らす。あるいは生活保護の場合は、就労による収入分が差し引かれるから、就労へのインセンティブが弱まる。
*対象を厳密に定めようとしても、受給資格があるのに支給から漏れてしまう人が発生する。
*支給対象ではない中間層が、貧困層を支援するための税負担に反発する感情や動きが強まる(「租税抵抗」の発生)。そのため、中間層と貧困層の間の亀裂が広がり、社会の分断が進む。その結果、ターゲッティズムによる支援が縮小されることが起こる。生活保護基準の引き下げに対しても、当事者以外に大きな社会的抵抗が起こらなかった。
(4)ユニバーサリズムの立場に立つBIは、生活保護制度などターゲッティズムの抱えるこうした問題点を解決できる。しかし、ユニバーサリズムもいくつかの問題点を抱えている。次の批判は,BIに対する批判でもある。
*ユニバーサリズムは、巨額の財源を必要とするが、それを賄うだけの重い税負担を人びとは(自分も受益者になるとはいえ)引き受けないだろう、という批判である。
*ユニバーサリズムは、貧困対策として有効だとしても、格差の縮小にはつながらない、という批判である。
4 BIは、反資本主義の制度なのか。
(1)BIは、資本主義それ自体を否定するものではなく、資本主義の下で実現可能な制度である。BIは、賃金労働と商品経済の全面的な浸透を前提にした税の徴収によって成り立つ。言いかえると、BIは、福祉国家の新しい形での再建という意味をもつ。現在の資本主義が避けがたく生み出す巨大格差と貧困増大に歯止めをかけ、社会統合を進める。また、新自由主義者からは、社会保障費用の削減になる(「小さな政府」に向かう)という視点から支持される面もある。
(2)しかし、BIは、反資本主義の側面をもつ。「働かざる者、食うべからず」という近代の大原則を覆し、労働時間の抜本的な短縮をもたらすからである。賃金労働そのものを否定しないが、失業の恐怖から解放されるから、低賃金や劣悪な環境(「ブラック企業」)で働くことをいつでも拒否できる。どんなに劣悪な労働でもお金を稼ぐためには耐え忍ばねばならない、という隷属から自由になるのである。これは、賃金労働からの解放(労働の選択の自由)の第一歩である。また、BIは、「自己責任」を強調して社会保障費用を削減してくる新自由主義と対抗する。その意味で、反資本主義の運動にとって具体的な要求と手段の1つになりうる。
? BI に対する批判と反論
1 第1は、働かなくても所得を得られるのだから、就労への意欲を失わせ、怠け者を増やし、社会の活力を低下させる、という批判である。
(1)BIは、M・フリードマンのような新自由主義者からも支持されている 。彼らは、社会保障制度を効率化する(給付に際しての行政コストの削減)という観点から、BIを支持する。新自由主義者は、BIが労働へのインセンティブを弱めることがないように、BIの支給額を低く抑え(例えば月4?5万円)、働かざるをえないように仕向けることを提案する。
(2)左翼は,BIを生存権の保障が不可欠であるという立場から支持する。したがって、シングルでも自立して人間らしい最低限の生活のできる水準の金額を支給するべきだと主張する。生活保護の生活扶助の金額を参考にすると、月8?10万円が支給されることになる。そうすると、働く意欲は弱まるのではないか。
(3)その金額では、最低限のつつましやかな生活ができるとしても、もっと良い生活を楽しむために高い所得を得たいと思う人は多いはずである(労働者の平均給与は、男女平均で月35万円、女性でも月23.3万円、2016年)。したがって、お金を稼ぐ労働への意欲は、簡単には弱まらない。
(4)しかし、お金を稼ぐ労働への意欲や執着が弱まることも確かであろう。例えば、これまで月30万円を稼ぐために週40時間働いていた人が、月8万円のBIを支給されるようになれば、あと22万円分だけ稼ぐために週30時間弱しか働かなくてもよくなる。このことは「より少なく働き、より豊かに暮らす」社会に近づくことであるから、大いに歓迎すべきことである。
(5)BIと生活保護を対比すると、 生活保護の場合は、働いて稼いだ分だけ給付額から減額されるために就労する意欲が失われる(「貧困の罠」)。だが、BIは、働いて稼いだ所得がそのまま上積みされるから、就労へのインセンティブは失われない。稼ぎたい人は、働いて大いに稼げばよい仕組みだ、と言える。
2 第2は、BIは巨額の財政支出を必要とするが、それを賄うだけの財源を確保することは難しい、という批判である。これがBIに対する最大の批判である。
(1) 仮に月8万円をすべての人に支給するとすれば、人口1億2千万人として年約115兆円もかかる.月10万円とすれば、144兆円かかる。現在の国の予算規模が約100兆円、社会保障給付費が118兆円(2016年)だから、たしかに巨額の財源が必要とされる。しかも国の借金(累積債務)は1000兆円を抱えている財政危機のなかで、財源面からBIは実現可能性がない、という批判は強い。
(2) しかし、小沢修司が提唱したBIの財源確保の方法にしたがって財源の調達を追求すると、財源を確保することは可能である。
*現在、民間労働者の給与所得の総額は207.8兆円、自営業者などの申告所得の総額は40.1兆円であり、合計248.0兆円である(2016年度)。これに公務員の給与(人件費)27.7兆円を加えると、個人の所得総額は約275兆円(275.6兆円)になる。
*この所得総額から、多くの所得控除や税額控除が差し引かれるから、実際に課税される金額はずっと少なくなる。所得控除には、基礎控除や社会保険料控除だけではなく職業や家族構成の違いによる給与所得控除、配偶者控除、扶養控除などがある。また、所得税率に関しても、税率5%以下の人が6割、10%の人が8割を占める上に、金融所得は一律20%といちじるしく低い。したがって、実際の所得税収は17.7兆円(2016年度、給与所得の税収は9.4兆円、申告所得からの税収は5.9兆円)にすぎず、個人所得総額の6.4%にとどまる。
*そこで、現行の所得控除をすべて廃止し(ただし社会保険料控除は除く必要がある)、所得総額275兆円に40%の比例課税をすると、110兆円の税収が得られる。月額8万円のBIにすれば、財源を賄うことができる(もちろん、累進課税にして高所得層の税率をより重く、低所得層の税率を軽くしてもよい)。
*税率40%は、現行の所得税率の水準から見れば、恐ろしく乱暴な増税に見える。しかし、可処分所得は、BIが支給されるから現行の低い所得税の下でのそれと、ほとんど変わらないのである(表の試算を参照)。
(3)しかし、AI導入によって雇用機会が減り働く人が大幅に減ると、働くことで得られる個人所得も大きく減る。すなわち、所得税収も大幅に減るから、BIを賄う財源が不足することになる。そこで、提案されているのが、AIへの課税である。
*AIへの課税といっても、これは、AIを所有したり使用する人への課税である。こうした人びとは、AIの利用によって巨額の利益を得るわけだから、課税されても当然である。
* マイクロソフト社のビル・ゲイツは、「ロボットが人と同じ量の仕事をするようになれば、人と同じレベルで課税すればよい」と発言した。AIの発達で失業が増えたり所得格差が拡大するから、ロボットに課税して教育訓練や失業対策のお金を工面するというアイデアである( 日経新聞17年9月7日 )。
*森信茂樹も、「AIから生み出す付加価値に課税してBIの財源を捻出」するために「AIを操る高所得者への課税強化が考えられる」と述べている。しかし、森信は、AIへの課税は「海外への所得の租税回避や節税行為を引き起こ」すから、「実効性は薄い」と悲観的である (「人口知能に仕事を奪われる人々をBIで救おうという議論の現実味」、「DAIAMOND online」16年8月16日 )
3 第3は、BIだけでは生活できず、医療・介護・子育て・教育・住宅など誰もが必要とする社会サービス(現物サービス)の十分な提供こそ優先されるべきである、という批判である。
(1)たしかに、月額8万円のBIだけでは、人間らしい生活を営めない。日本では、人びとが多くの現金収入を必要とする(そのために長時間労働を行なったりする)のは、子どもの教育費と住宅費に多額の支出を強いられるからである。また、医療や介護の社会サービスが増大するニーズを満たせないために、将来への不安が高まり、病気や介護のリスクに備えて「自己責任」で預貯金に励むからである。
*高等教育(大学教育)の費用について、日本は家計など私的負担の割合が64.8%と高いちじるしく高い(OECD平均は30.0%)。また就学前教育についても私的負担の割合が55.0%と際立って高い(OECD平均は18.3%)。
*日本では持ち家政策が推奨されて、低家賃の公営住宅を提供したり家賃補助を行なうなど住宅を公共サービスとして保障する政策が採られてこなかった。そのため、多くの人びとが住宅ローンという重い債務に縛られることになった。
*高齢化の急速な進展に伴って介護を必要とする人が急増してきたにもかかわらず(要介護認定者は、2000年の218万人から15年には600万人に)、公的な介護サービスの提供が圧倒的に不足している(家族の介護のために離職する人が毎年10万人、このままでは2025年には介護人材は38万人も不足)。
(2)BIは現金による最低所得保障にすぎず、生活保障の万能薬ではない。BIの金額を高くするのではなく、医療・介護・子育て・教育・住宅など誰もが必要とする社会サービスが無料あるいは低料金で提供されなければならない。
(3)井手英策は、普遍主義的な社会保障サービスの拡充を主張するが、BIについて慎重な態度をとっている。「なぜ福祉や教育などのサービスではなく、現金でなければいけないのかが問われる。医療や介護、教育の自己負担を軽くできれば、所得が多少減っても、やりたい仕事につき、余暇を選ぶ自由が広がる。……。サービスによる生活保障があるからこそ、BIは少額の給付でも収まる」、「実現可能性は財源論で決まる」(「BOOKRVIEW」)。
(3)新自由主義者は、BIを給付する代わりに、医療・介護・子育て・教育・住宅などの社会サービスを削減する、と主張する。私たちは、こうしたBI論とたたかわねばならない。私たちの主張は、BIも十分な社会サービスも、である。
【現行制度とベーシック・インカム導入の場合の可処分所得】
〔夫婦と子ども2人 (16?22歳)で700万円の給与収入のある世帯〕
●現行制度
収入700万円?社会保険料控除70万円(700×0.1)?所得税19.1万円{(収入?社会保険料控除?所得控除)×税率}=610.9万円
注)所得控除342万円:給与所得控除190万円、基礎控除38万円、配偶者控除38万円(パートの妻は非課税)、扶養控除38万円×2。
注)所得税率(課税所得金額に対する税率):195万円までは5%、196〜330万円は10%(?9.75万円)、331〜695万円は20%(?42.7万円)、696〜900万円は23%(?63.6万円)、901〜1800万円は33%(?153.6万円)、1801万円〜4000万円は40%(?279.6万円)、4001万円超は45%(?479.6万円)。
●ベーシック・インカム導入の場合
収入700万円+ベーシック・インカム384万円(8万円×4人×12ヶ月)?社会保険料控除70万円?所得税252万円{(収入?社会保険料控除)×税率}=762万円
注)所得税率:40%。50%に引き上げても、可処分所得は699万円になる。
〔シングルで300万円の給与収入のある世帯〕
●現行制度
収入300万円?社会保険料控除30万円(収入×0.1)?所得税6.2万円{(収入?社会保険料控除?所得控除)×税率}=263.8万円
注)所得控除146万円:給与所得控除108万円、基礎控除38万円
●ベーシック・インカムの導入の場合
収入300万円+ベーシック・インカム96万円(8万円×1人×12ヶ月)?社会保険料30万円?所得税108万円{(収入?社会保険料控除)×税率}=256万円
注)所得税率:40%。税率を35%に下げると、可処分所得は271.5万円になる。
? BIの導入のために何が必要か
1 BIの意義や必要性について、人びとの政治的な合意を創り上げる。
(1)BIの導入のために、最初の、かつ最大の関門は、なぜBIが必要なのか、またBIがどれほど魅力的な制度なのかについての政治的な討議と合意形成を行う ことである。スイスの国民投票では27%の有権者が賛成したが、日本では「働かざる者、食うべからず」というイデオロギーが人びとのなかに深く根をはっている。この常識とたたかうことは、並大抵のことではない。
*「働かない怠け者に、なぜ税を負担して現金を支給する必要があるのか」という疑問や批判に対して、丁寧な応答と対話を組織する必要がある。とくに、BIが労働をお金を稼ぐ拘束から解放すること、労働とライフスタイルを選択できる自由を得られることを明らかにする。また、リスクに対して「自己責任」では対応できず連帯とコストの分かち合いが必要であることを、明らかにする。
*BIが高所得層や超富裕層にも例外なく支給されることへの批判や疑問も、強く出されると予想される。最低所得保障は、真に救済を必要としている貧困な人びとに提供されるべきだ、というのは、間違いではない。しかし、誰が「真に救済を必要としている人びと」なのかを判断したり決めることは実は困難である。そのことが、分断と敵視を生み出している。普遍主義的な生活保障の重要性について合意していくことが必要である。
*社会サービスを拡充しながらBIを導入することは、巨額の財源を必要とし、人びとの税負担が重くなることについて合意しなければならない。政治や政府に対する不信をはじめ「租税抵抗」感が強いなかで、なぜ「共通の財布」としての税(財政)が必要あるのか、どのような税の仕組みが望ましいのかについて、市民の間で学習と討議を積み上げる必要がある。
*BIは、国民だけではなく外国人労働者を含む外国籍住民にも給付される。その意味で、国境に穴を穿つことになるが、それだけ排外主義的な感情による反対論が高まる可能性がある。BIをめがけて大量の移民や難民が押し寄せてくるのではないかという不安(半ば妄想)も、煽り立てられる。
2 BIの本格的な導入に向けて、その入り口となる制度や仕組みを作る。
(1)BI的な仕組みを部分的に導入する。
*所得制限なしの子ども手当を復活する。対象は、全員ではなく子どもという世代に限定されるが、親の所得が低いか高いかに関わりなく、子どもであれば全員に一律の現金を給付するのは、BI的発想である(自民党政権が復活させた児童手当には所得制限があり、専業主婦の世帯で子ども2人であれば、年収960万円以下でないと支給されない)。また、支給年齢を18歳まで引き上げる。
*「若者基金」あるいは「若者基礎年金」を創設する。いずれも、若者のなかに広がっていることを直視し、若者を支援する制度である。
「若者基金」は、20歳時にすべての若者に200?300万円の基金を給付し、勉強・スキル習得・留学・起業などのどれにでも使えるようにする。イギリスでは、2005?11年にかけて「児童信託基金」が実施された。これは、政府が出生時と7歳児に計500ポンド(約70万円)を出資し、保護者がそれに増資して、本人が成人(18歳)に達した時に引き出せる子ども名義の貯蓄・資産運用口座であった(斉藤純一『不平等を考える』)。
「若者基礎年金」は、広井良典が提案したもので、20?30歳のすべての人間に月4万円を支給するという仕組みである(『持続可能な福祉社会』)。
*税による「最低保障年金」制度を導入する。現在の年金制度では、国民年金の受給者(約1000万人)は満額でも月6.4万円の支給額で、45%の受給者は月4万円強の額しかない。これでは、最低所得保障の機能をまったく果たしていない。現在は、2階建ての厚生年金の基礎年金部分にも税(1/2)が投入されているが、これは高い年金を受給している人にも税を投入していることになる。そこで、基礎年金に一律に税を投入するのを改めて、国民年金だけの受給者や無年金者など低年金受給者の所得が生活できる水準(生活保護給付並みの8万円)に達するように、税を投入して給付水準を引き上げ、最低保障年金を実現する(白川「社会保障の大拡充と公正な税制でアベノミクスに対抗する」、『テオリア』17年6月10日、7月10日号)。
(2)給付付き税額控除を導入する。
*これは、課税最低限を定めて、それを上回る収入の人には所得税を課すが、下回る収入の人にはマイナスの所得税を課す、つまり税を給付するという制度である。
【給付付き税額控除の仕組み】
課税最低限300万円、所得税率30%とする。
[年収500万円の人]
課税額:(500?300)×0.3%=60万円 可処分所得:440万円(500?60)
[年収150万円の人]
課税額:(150?300)×0.3%=?45万円 可処分所得:195万円{150?(?45)}
[年収ゼロの人]
課税額:(0?300)×0.3%=?90万円 可処分所得:90万円 {0 ?(?90) }
*給付付き税額控除は、貧困対策に重点が置かれた政策であり、低所得層を主たる対象にしたものである。その意味で、対象者を一定所得以下の人に絞ったターゲッティズムの立場に立つ。しかし、これまでの税制では、課税最低限以下の所得しかない低所得の人は、税金をまったく支払わなくてもよい(課税ゼロ)だけで、何の得もない。給付付き税額控除は、すべての低所得者に対して所得額に逆比例する給付を行う。生活保護給付とは違い、個々の資格審査(ミーンズテスト)はなく、一定水準以下の所得しかない人はすべて給付を自動的に受け取ることができる。また、生活保護とは違って、働いて収入が増えても給付が減らされることはないから、就労へのインセンティブは確保される。
*ただし、全員の所得の正確な把握が必要であり、税・社会保障番号制度の導入が必要になる。それでも、米国の給付付き税額控除(勤労所得税額控除、勤労所得がゼロの場合は給付されない)では、不正受給が後を絶たない。
〈参考文献〉
*小沢修司『福祉社会と社会保障改革』(高菅出版、2002年)
*T・フィッツパトリック『自由と保障』(武川正吾/菊地英明訳、勁草書房、2005年)
*武川正吾編『シティズン・シップとベーシック・インカムの可能性』(法律文化社、2008年)。
*山森 亮『ベーシック・インカム入門』(光文社新書、2009年)
*橘木俊詔×山森 亮『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』(人文書院、2009年)
*宮本太郎『生活保障』(岩波新書、2009年)
*堅田香緒里ほか『ベーシック・インカムとジェンダー』(現代書館、2011年)
*原田 泰『ベーシック・インカム』(中公新書、2015年)
*R・ブレグマン『隷属なき道』(野中香方子訳、文芸春秋、2017年)
*井上智洋『AI時代の新・ベーシック・インカム論』(光文社新書、2018年)
*白川真澄「雇用・生活・生存を支える仕組み――ベーシック・インカム」(座標塾第6期第2回、「グローカル」2010年6月1日、7月1日、8月1日)
*白川真澄「ベーシック・インカムのすすめ」(『市民の意見』?121,2010年8月1日)
(これは、7月20日の「座標塾」第3回での報告レジュメです)