制御不可能な原発も投機マネーもいらない!
ATTAC Japan(首都圏)の声明
未曾有の自然災害に、予見できたはずの人災が追い討ちをかけている。福島第一原発の深刻な事故である。原子力発電を強力に推進してきた東京電力と政府・経産省は今回の原発事故に対して責任を負う義務がある。とりわけ、この原発事故により経済的損失を受けている地域の住人や農業、畜産、漁業関係者などへの保障は速やかに行われなければならない。また、電源開発にかかるエネルギーおよび産業政策の失敗を認め、原子力発電から再生可能な自然エネルギーへの転換を宣言するべきである。
政府は、本来なら地震および津波の被災者の救援救助や生活再建に全力を投入すべきであるが、「想定外」という釈明付きで原発の事故対応に追われている。現在、まさに文字通りの懸命な冷却作業等が行われているが、依然として予断を許さない状況が続いている。放射性物質は放出され続け、放射能汚染が広がっている。制御不能な核分裂が進み大暴走する危険性はいまだ去っていない。政府は、原子力発電がいかに危険であるかを再確認し、ただちに原子力エネルギー利用を中止すべきである。
さらに、ここで、私たちはもう一つの憂慮すべき事態について指摘しなければならない。復興需要をにらんだ円買いを続ける投機マネーの暗躍である。被災者の苦難と放射能汚染の危険性を横目に、自らコントロール不能に陥り世界中に大混乱をもたらし、そのツケを世界中の、とりわけ貧しい人々に押し付けてきた投機マネーが、この機に乗じて日本経済に襲い掛かっている。
急激な円高を受けて、菅直人首相は「投機マネーと闘う」と述べ、緊急にG7電話会議を召集し、協調介入を実施した。しかし、本来なら円売りが進むべきところ、ヘッジファンドなどの投機筋はますます危機下の円買いを強めている。日銀による短期金融市場への過去最大規模の資金供給も、どぶに金を捨てているようなものだ。株式および商品市場の乱高下は止まらない。
いったい日本政府に本気で「投機マネーと闘う」という決意があるのだろうか。投機マネーによる商品市場の乱高下は、被災地の人々の生活再建や世界の貧しい人々の生活にさらなる混乱をもたらす。世界中の投機マネーはガソリンや資源、食糧市場に流れ込み、世界規模での価格上昇に拍車をかけてきた。投機マネーを規制し、被災地の復興や世界の貧困を解消するための資金を確保するための「通貨取引税」や「金融取引税」などの導入が必要である。金持ちや金融資本などは、自然災害の発生如何にかかわらず、また自然災害によりさらなる困窮さを強いられている貧しい人々などを一切考慮することなく、いつどこへでも自由に移動することができる。
通貨取引税等の導入は日本経済の景気回復に冷や水を浴びせる、という批判もあるだろう。しかし私たちは、いまこそ従来の経済のあり方を反省しなければならない。日本では原発のほとんどが地方の漁村に立てられ、そこで作られた電力の大半が大都市に供給される。例えば、福島原発は政治や経済活動が集中する東京に電力を供給するために建設され、危険が指摘されていたにもかかわらず、東京の首都機能を維持するために、40年を越えて運転延長が許可されたばかりであった。すなわち、福島をはじめ周辺地域に危険を押し付け安全を収奪して、電力をはじめエネルギーや資源を大量に浪費するという東京と地方のあり方のうえに成り立ってきたのが、日本の資本主義の姿である。
私たちは、原発や気候変動や投機マネーに象徴されるような、リスクを周囲に押し付けながら持続もコントロールも不可能な今日の経済システムを根本から作り変える必要があると考える。社会運動の要求と結びついた通貨取引税等の導入はそのための一歩にすぎない。外国為替市場や商品先物市場における実需原則の復活や導入、ヘッジファンドに対するさらなる規制強化、実効的なタックスヘイブン規制など、考えられうるさまざまな規制をつうじて金融民主主義を打ち立てなければならない。それは差別や収奪、貧困の構造ではない「もうひとつの日本」への道でもある。
すべての原発の操業と建設を停止せよ!
投機マネーに規制を!
金融とエネルギー資源に対する社会的統制を!
ATTAC Japan(首都圏)
2011年3月27日