オルタキャンパス「OPEN」オープン記念
「正義と公正と社会変革」ディスカッション
9月26日、ピープルズ・プラン研究所の新しい試みである講座シリーズ・オルタキャンパス「OPEN」の開講を記念し、PP研のアドバイザー4人に担当をお願いした「正義と公正と社会変革」講座の第1回目として、パネルディスカッションを行った。
OPENは、「An Opening for People's Education Network」の略。「人と人とをつなぐ学びの場への入り口」といった意味を込めたものだ。その目玉でもある「正義と公正と社会変革」講座は、全9回。各回の議論が次回のテーマに続くよう構成した。前半はどちらかといえば「正義」について、後半はどちらかといえば「公正」について話し合い、全体で、「それが現在私たちが生きる社会を変えていくことにどう関係するのか」をイメージできるものにしたい、と講師一同考えている。講師は、齋藤純一さん、川本隆史さん、金井淑子さん、太田昌国さん。それぞれ最近の関心領域に沿って、この日講座の口火を切ってくれた。
政治理論・政治思想史が専門の齋藤さんは、政治的な意見形成、意思形成が民主的であるための条件について提唱。公共圏(パブリックな世界)と親密圏(親密な関係の世界)を呼応させながら、政治をシステムの問題としてのみ捉えるのではなく、情念や表象(人が人をどう表現するか)の問題も含め、社会が成り立つために人が連帯する必要を説明した。
川本さんは、「正義」を「普遍的な公平さの実現」と、「ケア」を「目の前の苦しみを緩和しようとする営み」と定義し、両方を兼ね備えた社会のあり方を構想。その実践である、日米両国の原爆をめぐる「記憶」の歪み・偏りを正す作業を「記憶のケア」と名づけ、これを通じて「記憶の共有」にいたる理路を探る提案をした。
倫理学から女性学/フェミニズム/ジェンダー研究に踏み込んだ経歴をもつ金井さんは、二者を架橋する問題意識から発言。「秋葉原事件」をめぐって、自身の「親密圏・身体性・暴力によるトラウマ」の問題への関心が高まったことを説明。ネオリベラリズムに親和的な男女共同参画はもとより、フェミニズム自体にも厳しく自己反省のまなざしが向けられるべきか、とつぶやくように語られた。
太田さんは、「挫折した二〇世紀型社会変革運動の理念と実践のどこに過ちがあったか」を考え新たな道を探ること、および「理想主義の敗北の上に咲く徒花のような日本ナショナリズムの悪煽動を批判する」有効な視点を得ることへの関心を喚起。講座ばかりでなく、PP研全体の思想と運動につながる形で議論を締めくくってくれた。
今後も楽しみな「正義と公正と社会変革」講座。ご参加ください!
ファシリテーター:青山薫
『季刊ピープルズ・プラン』45号掲載