[『季刊ピープルズ・プラン』47号・研究会/プロジェクト報告]

戦後研究会

 前号本欄で「活字化」準備中と書いた、3月14日の戦後研主催「プロレタリア文学とこの時代」の集会記録は、反天皇制運動連絡会機関誌『季刊 運動〈経験〉』の29号に無事収録された。掲載を許可していただいた報告者・応答者の方々に改めてお礼申し上げたい。当日参加できなかった方は(参加した方も)、ぜひ同誌をご覧いただきたい。

 さて定例の研究会は、4月からの流れで小田実シリーズということになった。5月は、小中陽太郎『市民たちの青春――小田実と歩いた世界』(講談社)を取り上げた。「マジメ市民」の観点から語られがちなべ平連の運動を、「インチキ市民」の立場からイキイキとした筆致で描いている本だと言えよう。ただし事実誤認が多いのには注意が必要。

 6月は小田実『「べ平連」・回顧録でない回顧』(第三書館)を読んだ。繰り返しの多さはやや気になるものの、小田の立場からのべ平連「回顧」ということで読み応えがあった。

 7月も小田実。『世直しの倫理と論理』(上下巻・岩波新書)を扱った。渦を巻くように何度も同じことを説く文体で読むのに疲れるが、内容的には共感できるし、いまなお問題が続いていることを感じさせられたとの感想だった。

 次回8月は、せっかくのシリーズなので、小田実の原点にあたる論文「難死の思想」をとりあげることになった。著作も多い人であり、しばらくは小田実シリーズが続く見込み。

 ところで6月半ばに佐藤一さんが亡くなった。各新聞は松川事件元被告とのみ報じたが、私(たち)から見れば、在野の一歴史研究者であり、戦後研の貴重な常連参加者の一人だった。享年87歳と高齢ではあったが、この春までほぼ毎回戦後研に元気な姿で現れ、議論にも参加されていただけに、突然の報と感じられた。

 研究会のたびに佐藤さんはお菓子と、そしてしばしば自分の書いた原稿のコピーを持ってきて、配ってくれた。原稿は、戦後史に関するもの、とくに昨今の下山事件「謀殺」説への厳しい批判が主なものだった。佐藤さんは亡くなられてしまったが、彼の「謀殺」説批判は改めて世に出される。ひとつは30年前の本の復刊である『新版 下山事件全研究』(インパクト出版会)であり、もうひとつは『「下山事件」謀略論の歴史』(彩流社・近刊)である。佐藤さんを追悼する集まりは10月下旬頃予定されているが、それ以外に戦後研としてこの二著について議論する場を設けることも構想中だ。(「『新版 下山事件全研究』発刊のご案内」はこちら

 定例の研究会や佐藤一さんの前記著作についてなど、興味ある方は気軽に事務局まで問い合わせを。
(松井隆志)