トップ (メニュー)  >  オルタナティブ提言の会  >  議事録  >  第10回 〈提言作成に向けて〉分野別ペーパーをもとに(2010年5月)
オルタナティブ提言の会

どのようなオルタナティブ提言を作成するか
2010年5月16日
        
 金子提案をもとに、大野さんの脱成長、地域自立などからむ論点を。国富さんの東アジア共同体、山浦さんの公正な国際分業と脱成長も。まずは大野さんから。

■大野和興 農業や地域は具体的なことなので、資本主義には接近できていないが、現状・論点・方向と分けて考えた。
 現状では、近代の農村を形成してきた枠組みがグローバル化によって解体。後戻りできない。経済的破綻では、農家経済そのものの維持が困難。価格の下落と規模の縮小両面。農地価格暴落続く。大規模農家ほど借金に苦しむ。農地が経営担保として成り立たなくなった。農業が経営として成り立たなくなった。農民的土地所有が解体。多国籍企業的土地所有ではない、土地はみんなのもの、というとらえ方が必要なのではないか。
 共同性の崩壊については、それが農家を成り立たせていたのが、高齢化による集落そのものの消失、農村家族、家族農業が解体している。家、家庭、家族が成り立たなくなってきている。それに変わる可能性とは何かを探る必要。農家経済の破綻と関わるのだが、60?70年代から農家に財布がいくつもあるようになる。家父長制の経済的基盤としての農業収入が、他の収入を家族それぞれが使うようになり、農家としての経済的基盤はなくなった。家族が成り立たなくなった。
 農村の購買力低下、シャッター通りか、地域経済の破綻。日常の買い物難民となる高齢者=福祉難民(高齢化して一人になると受け入れ施設がない。孤独死)。介護保険や民生委員も役に立っていない。
 家族の解体については、家族が福祉を抱えていける状態にない。家族がなりたたなくなっている。社会の単位として家族というものを置くことが非現実的になっている。「個」から出発してどのような共同性をつくっていくかが課題。
 国の政策は機能していない。農業者は政策論議などしない。国家の役割が現実的に見えなくなっている。自治体とグローバルな政策主体の間でやっていくのか、国家に役割を新しく与えるのか。
 FTAなどの自由貿易に関して1国では何もできない。WTOは2003年カンクン閣僚会議以降、機能不全。国際機構も上手く機能しない。政策主体を貿易の中でどう捉えればよいか。農業や地域を担う主体も見えない。ここにある、つくる、といえるのか。保守、変革どちらから見ても解けているので、どちらが早く作るか競争になる。
 農地法改正により、企業の進出が始まっている。海外資本・国家が占拠していく。土地を所有・利用する主体をどう考えるか。小さい兼業農家を主体にしたらどうか。
 重層的な生業構造の地域を考える。かつて地域がセットで持っていた産業、地域、経済の自律性、地域資源を基礎においた生業のセット化を。
 政策課題として、農産物価格の問題は、ベーシック・インカム議論とかみ合わせながら農産物価格論の再編成を。所得保障論・直接支払いは、現状では、市場主義・自由貿易主義にのっとっている。そうではない、生存権としてそこのところを支えていく理念。
 市民的土地所有=土地が持つ公性をどう復活させていくか、というときに、私的所有と「総有」。支配的所有関係になっていく中でも、総有(共同体的所有。入会)という所有形態が残ってきた。たとえば、三里塚で東峰神社の木が切られていたときに、神社と木は部落のものという主張が裁判(和解)で認められた。全体の所有であると同時に、構成する人の個々の所有でもある。多数決で漁業権を売る、ということは、一人でも反対者がいれば移転は成立しない。個と集団が分離不可能に結びついている。近代法としての私的所有のなかでは、個の意思と全体の意思が一致しないと所有移転はできない、ということになる。水なども含めて、所有と利用の仕方を構想することはできないか。
 小泉改革以降、所有と利用の分離を政府は言っている。所有権は取り上げられないが、利用権をどんどん移転して土地を使う。農地法改正もそのような形で進んでいる。私たちの側は、所有と利用を結び付けなおす。入会のようにとざされたメンバーシップではなく、開かれた地域の資源利用を構想できないか。それと、生存権としての農産物価格とベーシック・インカムのセットで地域経済を考え世界と対置していく。
 クローン、植物工場、生命操作、遺伝子組み換えなどに対抗する技術を生み出さないと、大元を握られてしまう。エネルギーもそう。民・百姓の技術、自然の技術、小さい技術、自前の技術などを、農業の再生とはきりはなせない、ということで、普遍的な技術論を。文化の多様性をどうするか。多様性のもとは地域性と風土性。技術の中にこれを入れて考える。

■山浦康明 WTO・国際貿易について消費者の視点から。
 農業のあり方、農産物の生産流通の問題からのオルタナティブ構想だったが、農業に関わらず、現状では産業構造全体に関わっている。マネーゲームの幻想が消滅した今、これまでの考え方ではだめ、というチャンスがめぐってきている。金融経済危機、ギリシャ危機を考えると、ギリシャに対するEUなどの対策も有効でない。これまでのシステム全体がダメということ。具体的には国家が税金を使って財政投融資をしてきたが、それさえも負債の原因になっている。予算措置に対してもノーを突きつける。何十兆円もの財政支出はおかしい、という。消費者・納税者として訴えていく。
 実効性ある金融規制はなされていない。具体的なこれまでと違う金融システムを。たとえば銀行の自己資本比率を引き上げさせる。役員報酬を公開させる。銀行の負担金制度を制度化。レバレッジ、タックスヘイブンの規制。税金の使い方としてセイフティ・ネットの仕組みづくりに使え、という。
 成長について、反成長なのか脱成長なのか。農業のみならず産業構造を問い直すということ。対GDPで国家負債がいくらあるか(日本は10%)で語られているが、GDPの中身は何かを問い直す中で問題は深められていく。消費、エネルギーの使用が何をもたらしたのか、産業廃棄物がどれだけ出ているか、などの行き詰まりを強調する。
 貿易についてはWTO機能停止は大野さんの言ったとおり。国際分業論は崩壊。GATTウルグアイラウンド後の構造の批判をしていく。消費者としてはどういった生活が望ましいかを主張し、生産流通のしくみを問い直し、産業構造全体を問い直す絶好のチャンス。
 SPS協定による問題。IPPC・OIEの問題。規制緩和が行われ貿易促進に向けた基準作りの安全性問題を指摘する時期。

■国富建治 東アジア共同体について
 現実のプロセスとしても進んでいるが、世界経済の成長センターとしての東アジア、ゴールドマン・サックスによる2050年のGDP見通しは、中国、インドネシア、日本、韓国、ヴェトナム、フィリピンが20位までに入っている。プラス、米中の国家利害が錯綜する地域として打ち出されている。
 日本経団連がアクションプランを出した。FPA・EPAの集積による地域経済統合を。ODAによる公益インフラ、東アジア内需主導の経済発展の3点を中心にしている。国家間対抗のイニシアティブの取り合いと、多国籍企業を中心にして成長戦略をしいていく。
 これに対して、単に資本と国家の東アジア共同体反対というのではなくて、民衆の側からどう介入して作り上げていくのかを考える必要がある。その場合のアプローチは、ひとつには国家政策の問題がある。国家政策に対して民衆の側がどう介入していくか。東北アジアの非核地帯構想や日朝米ソの関係正常化、軍備縮小、日米軍事同盟の廃棄、領土問題解決など。イデオロギー分野では、嫌韓・嫌中感情に対して多文化主義を打ち出していく。平和の問題も提起していく。二番目は、国家内部における人権・民主主義の問題。我々のアプローチとして、ほとんどの国々の内部で抱えている少数民族問題(アイヌ・沖縄・ウィグルなど自治権の問題など)に対して、すべてのメンバー国内の民衆から国家間の問題だけでなく、民主主義的な人権・権利の問題として提示していく。ジェンダー平等の問題も。
 グローバル化に対抗する民衆の側からの社会的公正に関わる課題に関わる共同基準をどのように獲得していくか、という問題になる。
 労働の問題なら、雇用、賃金、条件など移住労働でも実現すべき基準を提起する。食糧・貿易・持続可能な農業の基準も、共同に作っていく作業を。環境破壊に対してどう阻止するか、環境穂算するか。
 民衆運動のレベルで現実の共同体の流れが資本主導で作り出されようとしているときに獲得する必要。自分の国の問題だけではなくて、「内政干渉」していくべきである。

●<地域自立の問題>


■ 所有形態を変えていく、地産構造を変えていく、という大野提案はスパンが長い。

■ そんなことはない。すでに解体しているので急がないと資本に取られてしまう。現実に若者やフリーターに仕事を作れ、という話もしている。従来の構造があれば地域経済にもぐりこんでやっていけたのが、その構造がなくなっている。その構造を作り出せばよい。生業構造をつくる。

■ 国策レベルでもある。若者が農村へ行くようなインセンティブを作るなど。

■ ユニオンをやっているものからは、「農村へ行け」というと批判が出るかもしれないが。

■ 自治体でやっているような短期的な話ではなくて、トレーニングや長期的視野を持って考えれば。

■ 国がカネをつけて若者に配っている。地域に行って何かする手段。それを体系化すればよい。政策主体は自治体レベルに。とりあえず市町村。

■ ますます市場原理を入れて輸出産物を作るべきという論調もある。民主党の農家所得保障はどうか?

■ 外に向けてはオープンなので、市場主義。大規模を優遇している。セーフティ・ネットにはなるが。むしろ小規模農家加算をつけろというべき。

■ 自由化してFTAでやれば農産物価格は下がる。下がればそれを補償するという民主党。

■ オルタナティブではない。市場主義を見据えて政策を対置しないとだめ。

■ 市場主義という場合には、市場がダメというのではない?

■ 丸裸の自由競争がダメ。

■ 自由化は効率的ではない。自由化がダメというのははっきり言った方が良い。

■ 農業の大規模化から土地を引き剥がし小土地所有者がでてきた。大農場は所得保障不労所得(地代0)が入るので、それをいまいま大規模化している小土地所有にもどす。
 資本が入って土地を集積しても金が入る。研修生を入れて安い労働力、でもうける。研修生がもたせている商品作物。中国人研修生がいなくなったら行き詰まる。

■ 独自産業化を地域で。

■ 販路が難しい?

■ 需要はあるのでそれを資本から取り返す。

■ 都市の消費者とリンクして、システマティックにやれば効率的になり、安くもなる。

■ 所得保障をする、民衆間取引をする。農協が政府と取り決めてきた価格補償は有効なのか。

■ 価格闘争がなくなって20年。価格維持制度そのものを壊してきた。社会主義防止としての価格補償と、農民自身の運動としてのものがあったが、それが壊れた後、ベーシック・インカムとしての価格補償を作り出す必要がある。

■ 都市と農村の関係はどうする? 流通と地域自立をしたときに巨大化した消費地を支えられるか? 人口3000万首都圏を支える供給を確保するべき農業とする議論はある。自給率を向上させる。

■ 自給率は食べ方の問題でもある。生産構造を変えるだけでは解決しない。結果として自給できなければ都市の人も考える。
 500万ヘクタールの日本の農地(放棄地含む)あれば、基本的なカロリー自給は補償できる。野菜、芋、鳥、だけではなく、計算すると、250万ヘクタールを40万戸専業農家に割り当て、あとの250万ヘクタールを他で分けると1家族1haの耕地になる。自給できる。

■ 例えば、都市の消費者10人で農業生産者1人の雇用を作り出し、投資をしたり生産の手伝いをしながら、販売も請けおうという地域活動を展開することもできるのではないか。市民が自給率の向上と若者の雇用を、自分たち手でどうしてつくりだしていけるかが問われている。

■ 耕作放棄地が増える一方でかなり深刻。政策が機能していない。誰がやるか。

■ 不在地主の土地を分与するとき、どうしている?

■ 都市に住んでいる人には相続ではお金を渡す。農地は不在では登録できない。山は誰が持っているか分からないが。

■ 限界集落問題では、特産品をつくって都市が協力するものはたくさんある。都市住民が水源税を払うなど。高齢化が進む問題は若者を入れるしかない。

■ 技術も土地も絶えるとそれきり。

■ 徴農制が必要。

■ 放置されている山林から木造の体育館をつくるなど、試みはある。促進する仕組みはできないか。

■ 地域資源を無駄にしながら、雇用がないとか食糧が足りないとか言っている。自前の資源を使う仕組みは大事。

■ 遠くから運んでも安いので近場を使わない。環境に負荷をかけるので税金をかけて地場のものを使うようにする。

■ 産地主体だと国内でも長距離輸送を促す。

■ そもそも研修生で持っている産地主義・輸出産業はアンフェア。

■ 都市農業の復権は絵空事か。労働条件の整備、どのくらい耕地にできるか問題はあるが、地域の食糧自給率を高める、地方に行くのでなく、都市にいるまま農業をするのは可能では。全部それで食べるのはできないが。

■ 都市の規模が大きすぎると上手くいかない。都市・住宅政策も合わせて適正規模を考えながらやらないと。

■ 三里塚などには若者がたくさん入ってきている。

■ 近郊は大丈夫だろう。

■ 23区の人々がどこかと組んでやることは起こっている。

■ 農業で食えない人を価格補償するのではなく、ベーシック・インカムでは農業で食べなくてもいいとなる。

■ 兼業でならやる人が増えると思う。自分と周りだけは食べられるよ、と。

■ ベーシック・インカムが入れば自由にできる。

■ 30年間その仕組みでやってきた。野菜・鳥・卵はできてきた。

■ 日本の消費者は食の安全に対する意識が高いと思います。食の安全と生産者の雇用を保証するという意識が広まれば、適正・公正な価格で購入するようになるのでは。

■ 安全な食べ物は金持ちしか買えない。

■ 一方で生活保護基準で食べられるようにしなければ。
 有機については差別になるので、できるだけクスリを使わないということに。
 ミドルクラス以上を対象にした提携・産直・有機でない取り組みも出てきている。貧民同士で農村>引き売り交易している。

■ 第6次産業といわれていますが、お漬物・煮物などのお惣菜に加工して少量多品種で販売すればニーズがあると思います。コンビニやデパ地下の様子をみていると、高齢者の需要は高いのではないでしょうか。

■ もともと生協運動はそういうものだった。それが中産階級化したが、もとにもどればよい。いろんなイニシアティブがあってそれはみんなすばらしい、というのでいいのか、それを大きな力になっていくように提唱しなくてはいけないのか。

■ 所得保障はかつて高度成長にしたがって、労農連携のしくみがまわっていたが、それがだめになった。

●<親密「権」と土地所有>

■ 親密権の考え方はどう関係するか。

■ 親密権は、個を基本にするのであまり共同体や地域のことは入っていない。が、どんな関係を持つ人も持たない人も平等に扱われる制度をつくる基礎になる。

■ 財産の世襲制を禁止せよとの提案は面白い。

■ 個人のライフタイルを称揚しながら、土地家屋や大きな財産を子に受け継ぐことにすると、一定の関係だけに財産が集中することになるので禁止する。一代だけ(パートナーは残す)のリースにする。すでに一人世帯は多いし、家庭や地域が崩壊している現実があるので非現実的な提案ではない。あとは平等性を保障し、マイノリティのスティグマをなくしていく社会的な担保が必要。

■ 誰に受け継ぐかは自分で決めることにすれば?

■ 誰か保有して誰に返すのかが問題。

■ 基本的に大きな単位でないと全員に対する所得の再分配はできないので、ある種の国家は必要なのではないか。

■ 入会も分割して利用し、いらなくなったら返すようにしているところはある。

■ 使用権を誰に渡すか。

■ 農地などを長く使ってきた人からは、愛着のある土地を子が継げないことに反発はある。

■ 子が継がなくても、共同体に残すようにすれば良い。子も金を払って親の土地を買うドイツのようなところもある。

■ 子だから継ぐ、継ぎたい、という感覚をかえていくのもシステムの役割。

■ 日本の建物は耐久年数が短いので、日本では長期的な家のリースはできない。土地の借地権は、一代かぎりという形はでできるのでは。

■ リバタリアンは相続禁止を主張(機会の平等を保つため)。

■ 基本的な社会主義の考えと同じ。ソ連など。

■ 相続税を上げる必要があると思いますが、金持ちはコンサルタントに相談して海外に資産を移し租税回避をするので、国際的な監視や取り組みが必要となる。実際にそのような方向が、世界的な動きとなりつつある。

■ 私的所有の問題。使用権も権力を発生。共同体の配分? いずれにしても、私的所有のほうが大権力に対抗する武器になったりしてきた。環境も考えると受益者の範囲は広がるので、それも入れた所有権を。

■ 治水も含めた水の権利は、私企業に所有されたら問題。

■ 土地価格を動かさないよう、高く売った分に税金をかける。

■ 耕作をする人が権利を持つようにはしないとまずい。

■ 集落単位で農業をして「地域」を機能集団に。用益権だけを地域所有にする。目先の利いたやつが企業化してもうける問題もあるが。

■ 親密権のつくりかたが自由というのは賛成するが、土地の相続否定などまで盛り込んだときには、世間一般には受け入れられない心配がある。

■ 農地については農民的土地所有は解体している。そこからどうするか、とはいえる。企業に渡さないためにどうするか。

■ コミューンが多数決で決めたら売れる。

■ 一人でも反対したら売れないことに。

●<産業構造と脱成長経済>

■ 「産業構造を変化させていく絶好のチャンス」と山浦さんは言ったが、どのように変化させる?

■ いらないものが多すぎる。廃棄されたときの環境への負荷も考えて、生産に関する吟味、たくさんある無駄なものをなくする必要を分析、主張していく。健康食品はいらない。食品産業のあり方を変える。

■ 要らないものを作らなければ収縮する。それは収縮してもよい、という。

■ 消費が減れば経済は縮小するが、それはいいこと。

■ 脱成長論は、基本的なニーズを満たすものが普及した後、1990年以降はレイアウトを変えて売っているだけ。それをやめる。

■ パソコン・携帯等の電気製品は、海外に廃棄され環境問題をひきおこしているので、実態を知らせていく必要がある。

■ 原発のように、重厚長大産業の危険を指摘していく。

■ 無駄なものをつくるな、とは言えるが、政策として禁止する、とはいえない。

■ 現実的なものにするには、どういう文章にするのか。

■ 日本で作らなくてもi-Podを売り込んでくるようなことがある。

■ 欲望のコントロールはどのように自立的にできるか――社会主義には戻れない。かといって、放置もできない。

■ 数十年で人の意識はドラスティックに変化することもある。

■ 安全性を脅かすものについては消費者運動はやってきたが、「無駄なもの」に対してはどうか?

■ 大量生産大量消費の問題はやってきた。電磁波や廃棄物問題など。

■ 人間の欲望は無限ではないという社会主義の教科書があったが・・・

■ しかし、中国やインドはこれから欲望拡大で経済成長していく。

■ 成長がなければ雇用がなく、食べられない、と途上国は言う。

■ 生業再生をすれば食べられる。かつて膨大な雇用をもっていた地域の食品加工がつぶれた。地域生産を中心にして構造を変え、雇用もつくりだす。

●<一国ベースでない生存権保障>

■ 所得保障と生存権がベースか。その場合、一国的か。

■ 所得水準を各国で一緒にはできないだろう。

■ 現在は不可能だと思うので、まず、現地の生活賃金と労働権は保障することが重要。現実には、本国と現地の労働者の所得格差は徐々に縮まっていっている。国際産別組織であるグローバルユニオンでは、国際枠組み協定を多国籍企業と労組で結び、本国と現地の労働者の権利を同じにしようという取り決めが結ばれている。

■ 一律賃金はまず無理。だが労働安全権利条件は社会的に基準を設定する必要がある。

■ FTAの補足協定として結ぶのが欧米の慣行だった。インドは反対。ILOで労働条件・社会条件として決めるべきで、自由貿易と絡めるべきではない。政府の側の東アジア共同体構想の中でもよい進歩として出てくる可能性はある。その場合こちら側はどうするか。

■ 運動の側は、条件闘争にするか、テコとして使えるか。

■ 日本は既存の大労組の動きがにぶいので、市民が消費者としての立場から声をあげる必要があるだろう。

■ 共通の基準をどう獲得するか。運動の連携によってとは言えるが、どうやって?

■ 市民、とりわけ若者への労働教育は重要で、世界はどのような構造になっているのか知らせていくことが大事。例えば、年越し派遣村の連日の報道は、市民に実態や権利を知らせことができた。マスコミの力は大きい。

■ アジア的に作ろうという呼びかけはできる。

■ 形式的な最低賃金はあっても、実際にどうなっているか、情報としてアジアで共有すること。まともな労働時間と時給で食べられるようなものを買う運動とか。こちらの側の人間らしい生活をする所得保障で、100円ショップを使わないことも。

■ 毒入り餃子の問題も、中国で低賃金労働をしている労働者の問題として捉えることがない。

■ 生協労連で、連帯をせよ、といったが、国内の貧困問題には取り組んでもそれをやらない。

■ 100円ショップを禁止するのではなく、そこで買うことの意味を訴える。『毎日新聞』によれば、製品は中国のある市でほとんどつくっているとのこと。

■ 以前PARCでバナナをやったときと同じ。今は100円ショップで買うべきか、というだけ。変化していない意識や構造や労働運動を、こう変わる必要がある、と言える。

●<国家の機能>

■ 生存権を保障するのはいいとして、税金誘導は国家を肥大化させるが、どうか。

■ 税をとる国家は残る。

■ ベーシック・インカムなども国家がないとできない。

■ 政府税制調査会で「納税者権利章典」をつくり税の透明化をはかろうという議論があると聞いている。

■ 環境税をかける、長距離物流は高くする、炭素税など可能。

■ 海外からの輸送にも税をかけなければ、国外で安く生産したものを安い輸送料で日本に運んでくるので、国際連帯税の枠組みのなかで考えなければならない。

■ 関税ではなくガソリンに税をかけるなど。


■ EUは化学肥料と農薬には農家に税をかけている。

■ 日本でも環境税については意識も変わってきている。
それと、金銭的な取引をどうするか。ベーシック・インカムなどは重税をかけなくてもできると思うが、雇用、社会保障全体では税がかかる。税は現金収入が基本。市場取引でない活動に広げて考えると、すべてをお金で換算しないこともできる。経済規模は縮小してもお金ではないサービスで活力は残る。が、税をどうとって分配するかの問題は残る。

■ 生活保護はお金だが、住宅や食べ物を現物支給できないか。

■ 豊田市ではお米通貨を出している。

■ 空き部屋の提供、高齢者弁当宅配、ケアなどを、ベーシック・インカムのなかにくみこめないだろうか。

■ ベーシック・インカムは金だから、組み合わせが必要。住まいは生存権に入る。

■ 相互扶助が増えればベーシック・インカムは安くても良くなる。ベーシック・インカムがいらなくなるくらいだったら理想的。地域通貨は活動の交換が行われて初めて有効。

■ ただ、地域でもそんな関係は解体している。

■ 貨幣の持っている普遍性は大事。顔の見えない間接的なサポート。

■ 国家を持ち上げる方向になる場合もある。自治体に代替してもやはりガバメントの主体はそこが重要になってくる。

■ 「個」までも壊れている状況(欝や自殺)で、国家論、共同性、相互扶助、お金に変わる何か。

■ 国家とは、信頼できないものか。具体的になにをさすのか。

■ 国民とそうでないものに権利の差をつけるのはダメ。政府の必要性はある。国家と政府を区別して議論すべき。

■ 国家が私たちの望むような行政をしてくれるのであれば、国家も受け入れるのか。

■ そういうこと。いずれにせよ一定のガバナンスの機構は必要。

■ 国家がだめというのは乱暴。

■ 軍事力で治めるのはダメとはいえる。

■ 国民国家の枠が永遠なものであると思う必要はない。国民国家はそもそも成員の権利を制限するし、すでに機能不全に陥る。すぐになくせないので共存する必要はあるが、国家に飲み込まれるのではなく、民衆の自治力が乗り越えるような方向にどうできるか。

●<グローバル・ガバナンス>

■ 国境を超える活動に関して税をかけ、管理する権利を国家から取り上げる。意思決定をどうするかは、人口の多い国から票数を多くする。

■ 世界議会?

■ 究極的には世界政府になる。

■ トービン税も、誰が管理するかが問題になっている。フィンランドの研究者パトマキは、市民代表、政府代表からなるそれようの機関をつくる、という。

■ 小農保護のための基金を作る。世界中で流通する農産物に税をかけ、小規模農家をつぶさないために使う。分配するのは農民団体やNGOを入れた機関を作って運用。

■ IMFが権力を持つのはだめ。IMFを調査機関に改組して多元的に分配をするのが、ウォルデン・ベローの議論。

■ 国民国家のほうがまし、というのがベローの議論。それではだめ。金子提案のように人口に応じた代表性+NGOを代表させる?

■ 過渡的には国連で代表させる。その先をどうするか。

■ 航空券課税の使途管理は、国際機関UNITAIDがやっている。10カ国くらいの各国政府+NGO+ドナー+医療関係に使われるので患者代表で意思決定している。

■ 多国籍企業はどんどん国境を超えていくのに、労働組合は国内法(日本の法律の及ぶ範囲でない)に縛られる。例えば、フィリピントヨタ労組は日本の労組に加入して、トヨタ本社に団交の申し入れをしたが、最高裁まで争って却下された。

■ 労働組合が国境を超えて闘えるようにするしかない。

■ 他方で、人の移動と情報の移動は自由にするべき。

■ ただ、強制的に移住させられる人がいるなかで、「自由」ばかり強調しても・・・

■ 国籍のない人の場合に移動の上での権利問題も出てくる。

■ 原則として、賃金や条件を平等に保証するというしかない。

●<今後の進め方>

■ 全体の構成は、「はじめに」、「日本社会の現状と問題点」、「基本的な考え方」、「個別の提言」、とする。
 どういう原理に基づくどんなシステムが行き詰まっているのか。それに対する私たちの原案をつくる。
 原則を書き留める意味でたたき台を出す(白川)ので、それを基本に青山が追加。
 個別領域については、かなり出てきているので、あとで足す。
 出されたものは、まずウェブに載せ、公開。

■ 賛成。会としての欠落は、在日や沖縄の人が参加していないこと。私たちが考えるのとは違う視点があるから、たたき台ができたら批判してもらう。

■ ここでは、ヤマト側の視座から打ち出して、それを批判してもらう、ということでいいとおもう。
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