Re: TPP参加は破滅への道、脱成長の循環型経済への転換をめざす時だ/白川真澄
対象モジュール | 論説 |
件名 | TPP参加は破滅への道、脱成長の循環型経済への転換をめざす時だ/白川真澄 |
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- Re: TPP参加は破滅への道、脱成長の循環型経済への転換をめざす時だ/白川真澄 (川岸明夫, 2011/1/15 23:11)
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投稿日時 2011/1/15 23:11 | 最終変更
川岸明夫
白川真澄様
この場をおかりして、遅くなりましたが、新年の挨拶を申し上げます。
さて、標記の小論について一言感想を申し上げます。
1、TPPが問題なのは「農業切り捨て」という面のみにあるのではありません。
関税を廃止する、つまり自由貿易ということは、当たり前のことですが、為替換算を別にして、商品の価格が輸出国の原価=輸入国の商品価格となるということです。つまり生産価格が全てを決定する。この価格を決定する大きなものは労働賃金です。つまり、関税を撤廃することは、同時に労働賃金の低い商品が勝つことになる。それぞれの国では労働生産性をあげ、労働賃金の相対的引き下げ競争を行うことになります。この競争に勝った勝者、すなわち資本家が利益を得ることになるのです。勝利した資本家の企業の労働者は多少の見返りを受けるかも知れない。しかし、圧倒的な多くの労働者はますます引き下げられ、この状況下で勝利した資本家の企業の労働者も低位におかれ、なおかつ持続できません。何故なら、より低い労働賃金の国に資本家は生産を移すことになるからです。白川氏の小論には、「雇用の拡大」「所得向上につながらず」、また「せいぜい不安定で低賃金の非正規雇用の拡大をもたらす」と述べてはいます。しかし、私が前述したような掘り下げたものではなく、「不十分性」の指摘の域に止まっているのではないかとみられます。積極的に、正面から経済における生産・労働構造の変化とそれがもたらす政治的、社会的意味を捉えるべきでしょう。このような視点でまずTPPを捉える必要があると考えます。
2、農業について言えば、単純な切り捨て政策ではなく、政府はイギリスやフランスなどと同様に「保護政策」を導入することになるでしょう。勿論、所得保障は社会保障(端的にいえば選挙のために)の一環で政府・資本家の本意ではありません。基本は企業主義的農業の推進にあることは言うまでもありません。したがって大規模な企業農業法人と所得保障で生活を維持する高齢者世帯の小農家という構造になります。農協が猛反対しているのは、これでは農協の存在理由と経済権益が無くなるからで、真に日本農業の明日のために反対しているわけではありません。しかしTPPを阻止できるか否かはこの農協勢力の闘い如何というのが現在の政治状況です。主張と政策が明確でなければ自己権益を護ろうとする農協勢力の闘いに呑みこまれて補完勢力になるだけでしょう。主張を分けるものは何か。それは農協を擁護するのか。それとも農協にかわる社会的協同経営体をめざすかである。白川氏の言う「“地産地消”型の地域農業」を実現するためには、現在の無農薬野菜の産直の延長のようなイメージではなく、農村地域の社会的あり方、言い換えれば都市を含めた食の社会的あり方が変革されねばならない。具体的には農村においては農事組合法人的協同体の再組織化が中心となる。ただしすでに述べたとおり現行の農協では改革の柱にならず、また農協法の下での農事組合法人ではあらたな協同体にならない。したがって、全社会的な構造の解体と創成を求めるものとならざるを得ません。「脱成長の循環型経済への転換」とは農村に都会に新たな協同体を創り出し、互いにコミュニケートしていくこと、すなわち社会化してゆくことがまず基礎とならざるをえない。
3、TPPに対する闘いは農民ではない我々には、まず、第一の項で述べたとおり「労働者としての労働者自身の闘い」の深化から開始されねばならない。TPPの闘いを農民の課題としてアプローチする発想はまさにその時点ですでに敗けている。こうしたことを特に批判ということではなく、自分なりに考えているところです。
川岸明夫
流山市
この場をおかりして、遅くなりましたが、新年の挨拶を申し上げます。
さて、標記の小論について一言感想を申し上げます。
1、TPPが問題なのは「農業切り捨て」という面のみにあるのではありません。
関税を廃止する、つまり自由貿易ということは、当たり前のことですが、為替換算を別にして、商品の価格が輸出国の原価=輸入国の商品価格となるということです。つまり生産価格が全てを決定する。この価格を決定する大きなものは労働賃金です。つまり、関税を撤廃することは、同時に労働賃金の低い商品が勝つことになる。それぞれの国では労働生産性をあげ、労働賃金の相対的引き下げ競争を行うことになります。この競争に勝った勝者、すなわち資本家が利益を得ることになるのです。勝利した資本家の企業の労働者は多少の見返りを受けるかも知れない。しかし、圧倒的な多くの労働者はますます引き下げられ、この状況下で勝利した資本家の企業の労働者も低位におかれ、なおかつ持続できません。何故なら、より低い労働賃金の国に資本家は生産を移すことになるからです。白川氏の小論には、「雇用の拡大」「所得向上につながらず」、また「せいぜい不安定で低賃金の非正規雇用の拡大をもたらす」と述べてはいます。しかし、私が前述したような掘り下げたものではなく、「不十分性」の指摘の域に止まっているのではないかとみられます。積極的に、正面から経済における生産・労働構造の変化とそれがもたらす政治的、社会的意味を捉えるべきでしょう。このような視点でまずTPPを捉える必要があると考えます。
2、農業について言えば、単純な切り捨て政策ではなく、政府はイギリスやフランスなどと同様に「保護政策」を導入することになるでしょう。勿論、所得保障は社会保障(端的にいえば選挙のために)の一環で政府・資本家の本意ではありません。基本は企業主義的農業の推進にあることは言うまでもありません。したがって大規模な企業農業法人と所得保障で生活を維持する高齢者世帯の小農家という構造になります。農協が猛反対しているのは、これでは農協の存在理由と経済権益が無くなるからで、真に日本農業の明日のために反対しているわけではありません。しかしTPPを阻止できるか否かはこの農協勢力の闘い如何というのが現在の政治状況です。主張と政策が明確でなければ自己権益を護ろうとする農協勢力の闘いに呑みこまれて補完勢力になるだけでしょう。主張を分けるものは何か。それは農協を擁護するのか。それとも農協にかわる社会的協同経営体をめざすかである。白川氏の言う「“地産地消”型の地域農業」を実現するためには、現在の無農薬野菜の産直の延長のようなイメージではなく、農村地域の社会的あり方、言い換えれば都市を含めた食の社会的あり方が変革されねばならない。具体的には農村においては農事組合法人的協同体の再組織化が中心となる。ただしすでに述べたとおり現行の農協では改革の柱にならず、また農協法の下での農事組合法人ではあらたな協同体にならない。したがって、全社会的な構造の解体と創成を求めるものとならざるを得ません。「脱成長の循環型経済への転換」とは農村に都会に新たな協同体を創り出し、互いにコミュニケートしていくこと、すなわち社会化してゆくことがまず基礎とならざるをえない。
3、TPPに対する闘いは農民ではない我々には、まず、第一の項で述べたとおり「労働者としての労働者自身の闘い」の深化から開始されねばならない。TPPの闘いを農民の課題としてアプローチする発想はまさにその時点ですでに敗けている。こうしたことを特に批判ということではなく、自分なりに考えているところです。
川岸明夫
流山市