関西で常勤の仕事をするようになって丸4年。「明治以来」と文科省が宣伝する大学改革の波に揉まれ、もちろんその上にはグローバル資本主義のあらゆる分野での席巻というより大きな波がかぶさっているはずで、だけどそんな理屈に頭を回す余裕は日常業務をこなしている最中にはとてもなく、ただ使い捨て経済の中で個人だけでなく組織も生き延びることに必死になるのだなぁと実感し、いくらでも文句は言えるけど、人生50年で初の住宅ローンがあるので今のところまだ安定してる職は手放せず、etc.で、すっかりごぶさたしてしています。
それで久しぶりにご報告したい安定収入を手放せないもう一つの理由ですが、やはり関西で始めた同性の連れ合いとの家族生活が発展し、7月末に子どもが生まれました。70代でお子さんができたことを超自慢されていた某ダグラス・ラミスさんには負けましたが、女性として52才で子どもができたのは結構な記録ではないかと自負しています。実際に出産したのはもちろん連れ合いの方ですけれど。
なぜ、どのようにして女性同士のカップルが子どもを授かったのか?が謎ですよね。これはほんとうにおもしろい経験でした。同じような立場にある人びと――意外にぞろぞろいる!――を中心にシェアしたい衝撃が満載ですので、近いうちにどこかでちゃんと文字にしておきたいと思っています。うちの場合とくに連れ合いがイギリス人なので、法の差、市民権の差がわれわれだけでなく子どもにも大きく響いて、国籍・戸籍制度、その基礎にある男女二項制(ジェンダー/セクシュアリティ・システム)の根強いくびきの、ばかばかしさと抜け道を、どっちも実践を通してさらにばっちり考えたのです。
一端だけ、でも長いけど、ここに書きますと、子どもを日本で育てるためには、イデオロギー的には「そんなもんいらん!」と言いたい日本国籍が欲しい。それで、今の日本法では私の配偶者としてのヴィザは出ない連れ合いに日本人の親としてのヴィザが取れ、滞在が少しでも安定すれば一石二鳥。しかし子が日本国籍をもつためには「父親」になってくれる人も日本国籍で、かつこの人が子を自分の婚外子として認知してくれることが必要。3年かかって奇特な人を見つけ、妊娠出産に成功したのはいいが、次は区役所が、カップルは「連れ合いとこの人」ではなく「連れ合いと私」だと知っているなどなどが災いし(あまりに「アウト」でいるのも考えもの?)、この妙な出生届の受理を「預かり」に。市、法務省民事一課、そして外務省からイギリスのどこかの役所へと対応の相談が伝わって行き、これで不受理だったら訴訟も覚悟、またも人生初体験か、と思ってPP研のその辺に詳しい方々にも相談していました。けれど、ことが大きくなる前に届は受理され、子どもは日英二重国籍で、戸籍がない外国人の母の婚外子には最初は戸籍がありませんから、新しく自分一人の独立戸籍をつくることになりました。この最後の部分、お気に入りです。
さらに、この間も今も、直接面と向かって嫌なことをする人はいないことが「日本的」でまたおもしろい――クィアな人びとや反体制な人びとだけでなく、マンションの隣の自治会一生懸命のご夫婦や、当たり前だが細かい決まりにうるさい管理人さん夫婦などの方々からも、お祝い一色。産院スタッフも同時期に出産したヘテロのお母さんたちも、拍子抜けするほど無抵抗。男性の同僚まで、私に対しておっかなびっくり「連れ合いが子どもを産んだのだから(謎)、「仲間」なのかなぁ(謎)」という感じで、ようするに意外に暖かいことも大きな発見でした――続く。
ということで、よろしくご記憶のほどをお願いします。青山薫(運営委員)
2014/11/3 17:29:00
投稿者:事務局
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