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[『季刊ピープルズ・プラン』46号・研究会/プロジェクト報告]

憲法研究会

 いろいろな理由が重なってしばらくお休みしていた憲法研だが、4月末に半年振りで再開することになった。今回のテーマは、今年2月24日に岡山地裁で出た自衛隊イラク派兵差止訴訟(第三次)の判決文。以前読んでいた名古屋高裁判決と比較しながらの検討である。

 原告が求めていたのは、自衛隊イラク派遣の違憲確認、派遣差止、平和的生存権侵害に対する損害賠償の3つ。中でも丁寧に論述を展開しているのが、「平和的生存権の裁判規範性」だ。「裁判規範性がある」とは、裁判による紛争解決の基準になることを意味している。原告は、憲法前文・9条・13条(幸福追求権)が複合的に平和的生存権の根拠になると論じ、その具体的内容は、・戦渦に巻き込まれるなどの被害者にならない権利、・国外において他に被害を与えない、加害者とならない権利だとした。これに対して、被告・国は、平和的生存権は一般的・抽象的であって、具体的権利性に欠けると反論した。

 岡山地裁はこの被告の主張を退け、平和的生存権には裁判規範性があるとの一般的判示を行った。これが、岡山判決でもっとも高く評価される部分である。他方で、イラク派遣の実態面にはまったく踏み込まず、差止はおろか、違憲確認も行わなかった。この点が、違憲確認をした名古屋高裁に比べて批判された点だ。

 討論では、日本有事という「被害」を前提とした平和的生存権から、海外での「加害」を前提とした平和的生存権を考えねばならない時代に入っており、これをどう具体的に法的論理として内実化するかが問われているのではないか、との意見が出された。イラクに送られる自衛隊員、戦地派遣される民間人なら平和的生存権侵害を主張できそうだが、国民保護体制への動員、納税者としての権利の侵害ならどうか?などさまざまな具体例が出された。

 再開した憲法研は、以前よりペースを緩めて2?3ヶ月に1回の割合で行うことになる。
(山口響)
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