〈路地裏のアベノミクス臨時号〉
アベノミクスの失政を大手銀行の中間決算が実証
平忠人(『季刊ピープルズ・プラン』編集委員)
2014年11月23日記
2014年11月14日大手銀行5グループの2014年4月?9月期連結決算が、出そろった。最終利益は海外部門が好調な三菱UFJなど3グループで増えた一方、みずほファイナンシャルグループと三井住友ファイナンシャルグループは減少。これは、アベノミクス第一の矢「大胆な金融緩和政策」(市中の資金量を増やし貸出金利を下げるように仕向ける)によって、企業や個人が金を借りやすくして、設備投資や消費を促そうとした目論見を否定する結果となった。
大手銀行に於いても、超低金利で国内融資の利ザヤが縮小するなか、海外などに収益源を確保できるかどうかで差が生じたのである。三菱UFJ銀行の最終利益は9%増の5787億円と、4?9月期では2期連続の増益、みずほは17%減の3552億円だった。5グループ合計の最終利益は2%減の1兆6300億円になった。
国内の貸出金利は低下傾向にあり(地銀の再編<オーバーバンキング>は、人口減少に伴う預金の流失と利ザヤ減少から益々進むものと思われる)融資や国債などの運用利回りと、人件費などを含む資金調達原価の差を示す「総資金利ザヤ」は三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行でマイナスとなった。住宅ローンも4月の消費税後の需要減を受け、金利の引き下げ競争が激化してきている。
それでも、三菱UFJが増益を確保したのは、海外部門の収益貢献が大きいためである。本業のもうけを示す実質業務利益は前年同期比で523億円増えたが、内訳は昨年買収したタイのアユタヤ銀行が473億円、米国などの国際部門が274億円の押し上げが要因となり、個人向け業務の不振などを補った。
資金需要が旺盛な海外は国内より貸出金利が高く、他行も海外部門の強化を急ぐ。三井住友銀行は9月末までの1年間で海外の融資残高を250億ドル(17%)増やした。と言うことは、日本の大手銀行はもはや国内企業、個人から預かった預金も金融緩和による日銀から供給された大量の通貨も、海外市場に投資(融資)した方が儲かる構造になってしまっている。三菱UFJFGの平野社長は「日銀の追加金融緩和で、10月以降も金利低下を伴う利ザヤの縮小を想定する必要がある」と日本国内に於ける収益の確保が益々難しくなることを認めている。
すでにアベノミクスの「まやかし」は破たんしている(「脱成長を豊かに生きる」133頁?135頁参照)金融緩和はすでに十分行われてきたのである。生産者(供給)側は、実体経済からはおおよそかけ離れてしまった、ジャブジャブの「マネー」を必要とはしないのである。教育産業界では早くも始まった「少子化」「高齢化」に伴うマーケットの縮小に危惧の念を抱き、「海外進出」「収益の現状維持」を視野に経営努力を重ねているのにすぎないのであり、設備投資は「量産体制」を前提とはしない、「効率化」「繁忙期の外注削減」策として実施しているのにすぎない。
「アベノミクス解散」と強調(所詮2005年の小泉純一郎首相が郵政民営化の是非を掲げて衆議院を解散した二番煎じ)したが、先日の報道で谷垣禎一幹事長が「アベノミクスは賃金を上げ、100万人雇用を増やし・・・」(実質賃金はマイナス、93万人は非正規雇用)山口那津男公明党代表に至っては「アベノミクスは株価を上げたではないか・・・」江田憲司維新の党共同代表は「金融緩和は我々がアベノミクスより早く提案していた・・・」と党首レベルでこんな発言しかしていない(できないのか?)。
そんななかで、11月23日の東京新聞(朝刊)で「安倍政治2年間を問う」<進む二極化偏る富」を連載物で掲載を始めたのがせめてもの救いである。