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【声明】外国人住民への施策に関する共同要請書

内閣総理大臣    鳩山由紀夫 様
国家戦略室担当大臣 菅  直人 様
法務大臣      千葉 景子 様
外務大臣      岡田 克也 様
総務大臣      原口 一博 様


外国人住民への施策に関する共同要請書


 私たち、日本に住む外国人の人権保障の実現をめざす市民団体のネットワークである「在留カードに異議あり! NGO実行委員会」は、これまで出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)の改悪に反対し、取り組んできました。

 現在日本では、221万人を超える外国人が生活しています。そしてその数は、今後も増加することが予想されます。しかし、日本では今日に至るまで、外国人を管理すべき対象として捉え、人権保障の視点に立った議論や、多民族・多文化共生社会に向けた包括的な政策は不在のままとなっています。

 政権交代は、現行法制度の問題点を抜本的に見直し、人権基盤に立った法制度を実現する絶好の機会と言えるでしょう。それゆえ私たちは、真の多民族・多文化共生社会を実現するために、新政権が取り組むべき課題について以下を要請します。

【緊急に実施すべき事項】

1.2009年改定入管法の見直し

 2009年改定入管法は、外国人登録法を廃止して新たな在留管理制度と外国人住民票制度を導入しました。しかしこれによって、難民申請者を含む非正規滞在者の行政サービスからの制度的排除、中長期滞在者の負担増、日本人の個人情報では許されていないデータマッチングなど、さまざまな問題をはらんでいます。したがって早急に2009年改定入管法、また同法と連動する改定住民基本台帳法を見直すよう求めます。

2.非正規滞在者の正規化と、難民申請者の収容の停止

 2009年改定入管法の附則第60条第2項の主旨に従い、人権保障の観点から在留特別許可のあり方を見直し、非正規滞在者の正規化を行ってください。同様に、難民申請者の収容をただちに停止してください。
 *改定入管法第60条第2項 法務大臣は、この法律の円滑な施行を図るため、現に本邦に在留する外国人であって入管法又は特例法の規定により本邦に在留することができる者以外の者について、入管法第50条第1項の許可の運用の透明性を更に向上させる等その出頭を促進するための措置その他の不法滞在者の縮減に向けた措置を講ずることを検討するものとする。

3.入国時における外国人の指紋採取など生体情報の提供義務制度の廃止

 2006年の改定入管法で導入され07年11月から実施されている、外国人の入国時における指紋採取と顔写真撮影の義務化は、年間数百万人にのぼる外国人の生体情報を蓄積するにもかかわらず、取得・保管・利用・廃棄について明確な法律による規制がないまま運用されています。
 外国人から生体情報を取ることは、「外国人はテロリストである」という先入観に基づくもので、外国人に対する明らかな差別です。新政権は同制度を早急に廃止すべきです。

4.入国管理局ウェブサイト上のメールによる「不法滞在者」通報制度の廃止

 2004年2月から入国管理局は、ウェブサイト上で「不法滞在者と思われる外国人」を匿名でメール通報することを奨励しています。国連特別報告者は、2006年に国連人権委員会に提出した報告書の中で、「ある人が不法滞在者でないかとの疑いを持ちうるのは、人種的・言語的特徴に基づく『外国人らしさ』によってのみ」であり、「外国人嫌悪を直接扇動するものである」と同制度について指摘しています。このような制度は早急に廃止されなければなりません。

【人権保障に基づいた中長期的な外国人政策の推進と実施】

5.外国人の人権を保障するための国際条約の批准と国内法整備

 自由権規約や人種差別撤廃条約をはじめとする諸条約の委員会によってこれまでなされた勧告にもとづき、国内法制度を整備し、選択議定書に批准してください。
 国内法制度については、現行法の改善にとどまらず、新たに外国人人権基本法および人種差別撤廃法を成立させることが求められています。
 また、パリ原則に基づいた国内人権機関の設置を実現しなければなりません。パリ原則が要請している「多様な市民社会の反映」のためには、人権委員会の構成において外国人が排除されるべきではありません。
 日本は、国連の人権理事会の理事国であることを踏まえ、自由権規約、拷問等禁止条約、女性差別撤廃条約及び人種差別撤廃条約で定める選択議定書を批准すると共に2009年9月24日に署名が始まった社会権規約選択議定書に署名し、議定書の早期発効を支持すべきです。また、移住労働者の権利条約を批准するなど、新政権が積極的に国際人権政策を推進するよう求めます。

6.外国人人権基本法の立法化と担当機関の設置

 外国人に関わる施策は、法務省をはじめ多くの省庁でばらばらに行われており、人権保障の観点を欠いています。また、入国管理・難民関連の訴訟における国の主張は旧態依然とした一方的なものであり、人権保護の配慮がまったく見られません。
 このような現状を是正するために、外国人人権基本法の制定にあたっては、それを具体的・総合的施策として実施していく政府機関を設けることが必要です。

2009年10月19日
在留カードに異議あり! NGO実行委員会

〈賛同呼びかけ団体〉
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
外国人人権法連絡会
外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
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