シベリア特措法に関する共同声明
内閣総理大臣 菅 直人 様
衆議院議長 横路 孝弘 様
参議院議長 様
シベリア特措法に関する共同声明
私たちは、日本において国際人権基準に沿った人権政策を推進するために、長年にわたって取り組んできました。
6月16日通常国会最終日に「戦後強制抑留者特別措置法(シベリア特措法)」が制定されました。同法は、「酷寒の地で過酷な強制労働に従事させられた労苦」を慰謝する特別給付金支給だけでなく、調査や遺骨収集、体制の整備、次世代への継承なども盛り込んだ総合的かつ未来志向的な画期的内容であり、戦後65年、施行日現在で生存する日本国籍の元抑留者約7万人が対象となったことは、戦後補償の一歩前進と評価します。
しかし、元シベリア抑留者への補償問題が、これで全て解決したとは言えません。同法の国籍要件によって、同じシベリア抑留者でも朝鮮人、台湾人が排除されています。旧ソ連の資料によると約1万人の朝鮮人が抑留されました。かつて、「天皇の赤子」、「一視同仁」として戦争に狩り出したという歴史的事実を、この規定は無視しています。こうした正義に反する国籍差別規定を含む同法は、日本が締結した市民的及び政治的権利に関する国際規約 (自由権規約)第2条1項に反するものです。シベリア立法推進会議代表・全国抑留者補償協議会会長の平塚光雄氏も声明の中で、「日本人以上に苦労された韓国・朝鮮、中国・台湾に暮らす元抑留者らにも、相応の措置が講じられるべき」と訴えています。
1988年制定の平和祈念事業特別基金法により、シベリア抑留者に慰労金10万円及び銀盃を交付した時も、「国籍差別」があり、抑留朝鮮人の李昌錫さんは、1992年京都地裁に提訴しましたが、最高裁で敗訴確定でした(2001年死去)。今回の特措法についても、抑留台湾人の呉正男さんは、「国籍差別は解消されないでしょう、選挙で票にならないから…」と発言されました。
フランスの植民地兵だったセネガル人への年金差別(排除ではなく低額)に関して、国連自由権規約委員会は、1989年4月、「国籍の変更自体別異の取扱いを正当化する根拠とはなり得ない。…当事国は、規約2条に従い、通報者らに対し被害回復のための効果的な措置を取るべき義務がある」との見解を示し、フランス政府は平等な取扱いに是正しました。日本も同じ国際人権規約を批准していますが、国連への通報を認める「選択議定書」が未批准のため、日本からは国連に個人通報できないだけです。
立法府は、日本人と同じく抑留を強いられ、帰国後は祖国で排除・差別され、日本人元抑留者以上につらい戦後を送ってきた旧植民地出身者に対する補償法案をただちに起草し、今臨時国会で最優先に成立させるべきです。そして、その法律の施行は、今次の特措法の施行日に遡及させるべきです。
かつての平和祈念事業特別基金法と同じような「国籍差別」をこのまま存続させてはなりません。菅内閣が戦後補償における「国籍差別」を早急に是正するよう、ここに連帯し強く要望いたします。
極めて不合理に放置されている多くの「李昌錫さん」や「呉正男さん」のことを念頭に真剣な対応を求めます。
以上
2010年 月 日
<呼びかけ団体>
外国人人権法連絡会/人権市民会議/外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会/シベリア特措法の国籍差別をなくす連絡会議
内閣総理大臣 菅 直人 様
衆議院議長 横路 孝弘 様
参議院議長 様
シベリア特措法に関する共同声明
私たちは、日本において国際人権基準に沿った人権政策を推進するために、長年にわたって取り組んできました。
6月16日通常国会最終日に「戦後強制抑留者特別措置法(シベリア特措法)」が制定されました。同法は、「酷寒の地で過酷な強制労働に従事させられた労苦」を慰謝する特別給付金支給だけでなく、調査や遺骨収集、体制の整備、次世代への継承なども盛り込んだ総合的かつ未来志向的な画期的内容であり、戦後65年、施行日現在で生存する日本国籍の元抑留者約7万人が対象となったことは、戦後補償の一歩前進と評価します。
しかし、元シベリア抑留者への補償問題が、これで全て解決したとは言えません。同法の国籍要件によって、同じシベリア抑留者でも朝鮮人、台湾人が排除されています。旧ソ連の資料によると約1万人の朝鮮人が抑留されました。かつて、「天皇の赤子」、「一視同仁」として戦争に狩り出したという歴史的事実を、この規定は無視しています。こうした正義に反する国籍差別規定を含む同法は、日本が締結した市民的及び政治的権利に関する国際規約 (自由権規約)第2条1項に反するものです。シベリア立法推進会議代表・全国抑留者補償協議会会長の平塚光雄氏も声明の中で、「日本人以上に苦労された韓国・朝鮮、中国・台湾に暮らす元抑留者らにも、相応の措置が講じられるべき」と訴えています。
1988年制定の平和祈念事業特別基金法により、シベリア抑留者に慰労金10万円及び銀盃を交付した時も、「国籍差別」があり、抑留朝鮮人の李昌錫さんは、1992年京都地裁に提訴しましたが、最高裁で敗訴確定でした(2001年死去)。今回の特措法についても、抑留台湾人の呉正男さんは、「国籍差別は解消されないでしょう、選挙で票にならないから…」と発言されました。
フランスの植民地兵だったセネガル人への年金差別(排除ではなく低額)に関して、国連自由権規約委員会は、1989年4月、「国籍の変更自体別異の取扱いを正当化する根拠とはなり得ない。…当事国は、規約2条に従い、通報者らに対し被害回復のための効果的な措置を取るべき義務がある」との見解を示し、フランス政府は平等な取扱いに是正しました。日本も同じ国際人権規約を批准していますが、国連への通報を認める「選択議定書」が未批准のため、日本からは国連に個人通報できないだけです。
立法府は、日本人と同じく抑留を強いられ、帰国後は祖国で排除・差別され、日本人元抑留者以上につらい戦後を送ってきた旧植民地出身者に対する補償法案をただちに起草し、今臨時国会で最優先に成立させるべきです。そして、その法律の施行は、今次の特措法の施行日に遡及させるべきです。
かつての平和祈念事業特別基金法と同じような「国籍差別」をこのまま存続させてはなりません。菅内閣が戦後補償における「国籍差別」を早急に是正するよう、ここに連帯し強く要望いたします。
極めて不合理に放置されている多くの「李昌錫さん」や「呉正男さん」のことを念頭に真剣な対応を求めます。
以上
2010年 月 日
<呼びかけ団体>
外国人人権法連絡会/人権市民会議/外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会/シベリア特措法の国籍差別をなくす連絡会議
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